あとは野となれ山となれ

こどもや動物、みんなが安心して暮らせる世界でありますように・・・

本・動画感想

最も惹かれた人『光の指で触れよ』再び・・・

昨日あれだけ書いたのに、実は最も心惹かれた人物に触れていなかった。ユニコーニアの近くで、コミュニティには属さず一人で自給自足に近い暮らしをしているトーマスという人だ。 ある日、アユミはキノコとその友達であるオリヴィアを連れてユニコーニアの近…

求めていたものに出合った『光の指で触れよ』池澤夏樹著

ああ、私はこれを求めていたのだ!と思った。漠然と指向していたものが、はっきりと形をとってこの物語の中にあった。何十年か若い日に読んだら、きっと生き方を左右されたことだろう。 物語の中心となるのは「ぼく」の友人の天野家。大きな会社で、風力発電…

心地よい感動の青春物語『虹色の皿』拓未司著

王道の青春物語といえる作品だけれど、その王道ぶりが爽やかで気持ちよくさえ感じた。 主人公小西比呂は岐阜の高校を出て大阪の調理師専門学校に進み、卒業後は神戸のフレンチレストラン「シェ・ホンマ」に就職する。そこはフレンチを目指す料理人なら誰もが…

昔話と絡めた女性の半生『瓜子姫の艶文』坂東眞砂子著

伊勢松坂の遊女屋の伽羅丸は、間(あい)の山で拾われたみなしごだ。かすかにおっ母さんと暮らしていた頃の記憶があるが、切れ切れでおぼろ、今は木綿問屋の主亥右衛門(いえもん)の表の妻になることを夢見ている。 この遊女伽羅丸と亥右衛門の妻りくと、交…

こんなせつない愛の形も・・・『明日、世界がこのままだったら』行成薫著

市民館の新刊のコーナーにあった本。2021年9月30日発行とある。借りて読んでいることもあって、あまり新刊本には縁がないので、せめてこのコーナーの本はなるべく手に取るようにしている。 そんなわけで、新しい本ということ以外特に期待もなく読み始めたの…

有𠮷玉青著『車掌さんの恋』より「きせる姫」

電車をテーマにした5つの短編からなる『車掌さんの恋』。発行は2004年と、21世紀であることが意外な気がする。ピンクのはんなりした雰囲気の装丁も、のどかな感じのするタイトルも、もっと古い時代を思わせ、私など、昔バスに乗ると小さな帽子をちょっとお…

ちょっとした嘘さえ怖くなる『汚れた手をそこで拭かない』芦沢央著

手は、洗面所でしっかりきれいにしてからタオルを使うよう心がけている私には、訴求力の強いタイトルだったが、内容はだいぶ思っていたのとは違った。特に潔癖症の人や不潔恐怖の傾向のある人は出てこない。そもそも短編集によくある、収蔵作品のタイトルで…

資本主義経済の行きつく先?『悪貨』島田雅彦著

公園で暮らすホームレス、ある朝目覚めると足元にコンビニの袋が落ちており、その中には一万円札が200枚入っていた。 ホームレスは服装一式を買い、床屋で散髪し、町一番という店で寿司を食べるが、そのあと二人組の若者に残りの金の入った袋をひったくられ…

かく生きたい!と思う『影ぞ恋しき』葉室麟著

『影ぞ恋しき』は、以前『いのちなりけり』を読んだときに知った、著者の「いのち三部作」の完結編だ。そうして、葉室麟氏の遺作となってしまった。 hikikomoriobaba.hatenadiary.com 実は『花や散るらん』はまだ読んでいないのだけれど、前回市民館に行った…

思いがけない展開『笑うヤシュ・クック・モ』沢村凛著

ヤシュ・クック・モを知っている方は、相当なマヤ文明好きだろう。これは、マヤの王様の名前なのだそうだ。 遺跡から発見された、ヤシュ・クック・モをかたどったとされる香炉。 市民館の本棚でこの本を見つけ、タイトルや装丁から、てっきりのどかなお話だ…

北村薫さんの博覧強記ぶり全開!『謎のギャラリー』

以前、marcoさん(id:garadanikki)が紹介していらした北村薫さんの『謎のギャラリー』。marcoさんは実際の作品を北村さんが編まれた「特別室」の方から読まれ、あとから赤い本の方という順で、「これで正解だった」というふうに書いていらした。 粗忽者の私は…

胸のすく『下妻物語』

雨子さん(id:poolame)ちのざべすちゃんが紹介していた映画『下妻物語』が、ネットフリックスにあったので鑑賞した。 poolame.hatenablog.com 17年前の作品のようだけれど、深田恭子さん少しも変わっていない気がする。深田さんの子供時代を演じている福田麻…

男も女も潔く美しい『霧の橋』乙川優三郎著

1997年出版の作品。著者紹介には「国内外のホテルに勤務。現在は翻訳下請業に従事」とある。まだ乙川さんが専業作家になっていない頃の作品だ。前年にオール讀物新人賞を受賞し、本作では時代小説大賞を受賞している。 冒頭の章は陸奥国が舞台。一関藩三万石…

ほのぼのじんわり『愛しの座敷わらし』荻原浩著

食品メーカーに勤める高橋晃一は、突然地方への転勤を言い渡される。どうやら出世競争から外れたらしい。家庭を犠牲にして頑張ってきたのにとむなしくなり、これからはもっと人生を楽しんで生きようと一念発起、家族を説き伏せて、いや説き伏せ切れていない…

文句なしに犬が可愛い映画『ジューン&コピ』

ネットフリックスで視聴。初めてのインドネシア映画だ。 国際協力コスモス会や日本語教室で何人ものインドネシア人と交流してきたが、この映画の中心となる若夫婦は、インドネシアでどの程度の生活レベルなのだろうというのが気になった。登場する家が、日本…

不思議な恩田陸ワールド『きのうの世界』読後感は・・・

「もしもあなたが水無月橋を見に行きたいと思うのならば、M駅を出てすぐ、いったんそこで立ち止まることをお薦めする」と始まる本書、冒頭からいきなり著者の不可思議な世界に放り込まれてしまう。 単なる物語の読者ではなく、俯瞰と言うほどの高さでもなく…

今更ですが『マイ・フェア・レディ』

昨日、ネットフリックスのサイトを開くと、トップが『マイ・フェア・レディ』の紹介になっていた。そういえば、私はこの超有名な作品をまだ見たことがない。早速見ることにした。 休憩をはさんで(実際私のパソコンは途中で充電が切れてしまい、いったん終了)…

犬への愛があふれる『CALI K9:どんな犬でもしつけます』

『CALI K9』はネットフリックスオリジナルのドキュメンタリー番組。シーズン1を楽しく見ていたら、あっという間に終わってしまった。もっと見たい。ぜひシーズン2を作ってほしい。 カリフォルニア州オークランドにある犬の訓練センターCALI K9(Californi…

今年も見ている『すいか』

暑くなると、やっぱり見たくなってしまうドラマ『すいか』。2003年の夏ドラマなので、もう18年も前の作品だ。それでもまるで色あせない。ともさかりえさん演じる絆さんのファッションも、相変わらず素敵。 yonnbaba.hatenablog.com 舞台は、スリランカに行っ…

大和撫子と男装の麗人と激動の満州『俳風三麗花 草の花』三田完著

このところ敗戦時のソ連軍の登場する読書が続く。承知して読んだのは井上ひさし氏の『一週間』のみで、あとは偶然だっただけに、ちょっと因縁めいたものを感じる。 今回の作品も、ただ宇野亜喜良さんの装丁と、昭和初期という時代設定で美しい文章であること…

市井の一隅で静かに生きる人たちの力『泡』松家仁之著

このところ気になっている著者の最新刊。リクエストしていたものが届いたと市民館から連絡をもらい、受け取って一気に読んでしまった。 最初に読んだ『光の犬』は大作だったが、今回の『泡』は、二冊目に読んだ『沈むフランシス』と同じくらいの、200ページ…

平凡な人生を紡ぐ静かな物語の魅力『光の犬』松家仁之著

北海道東部の枝留(この地名は架空らしい)に暮らす添島家の、三代にわたる人々の物語。特別な人物も登場しないし、ドラマチックな出来事も起こらない。薄荷の会社の役員の祖父、その連れ合いで助産師として忙しく生きた祖母、その夫婦の一男三女の子供たち…

鯖猫長屋8巻まで読み進む

『ねこだまり』という猫にまつわるアンソロジーで出合った田牧大和さんの作品『鯖猫長屋 ふしぎ草紙』シリーズ、本日第8巻を読了した。昨年12月に出版された9巻もリクエストしてあったのだけれど、貸し出し中で残念ながらまだ手元に届いていない。 わけあ…

大女優ソフィア・ローレンと互角に渡り合う少年が魅力『これからの人生』

街中で、高齢の女性(ソフィア・ローレン)が少年にバッグをひったくられる。親の保護が得られない娼婦の子供たちの世話をして暮らす、マダム・ローザと呼ばれる女性だ。 少年はバッグの中身の品物が骨董として高く売れると思い店に持ち込むが、安物だと言っ…

60年たっても何ら学べない人の存在を思う『グリーンブック』

ネットフリックスで2019年日本公開の映画『グリーンブック』を視聴した。 1962年、天才黒人ピアニストドクター・シャーリーは、粗野なイタリア系の男ニック・ヴァレロンガを運転手兼用心棒として雇い、アフリカ系アメリカ人旅行者用の旅のガイドブック<グリ…

押しつぶされる者たちの叫び『東京ホロウアウト』福田和代著

コロナの影響を受けず、予定通り昨年東京オリンピックが開催されていたら、どんな読書になったのだろう。物語は2020年、オリンピックの開会式まで10日を切った東京で、ある新聞社に1本の電話が入ることから始まる。 電話の声は、「開会式の日、都内を走るト…

私の、あなたの、物語かも知れない『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月著

幼馴染の二人の女性の物語。一人はおとなしく引っ込み思案な望月チエミ。もう一人はなんとなく周りとの違いを感じている神宮司みずほ。みずほは神経質で教育熱心な母親のもとで育ち、子供の頃、家が近くて仲良しだったチエミの家庭が親子非常に仲が良く、と…

なぜこうも愛おしい『麦本三歩の好きなもの 第二集』住野よる著

「常識人ぶってる方がやべー奴なのだ」主人公の三歩、図書館勤務25歳女性、の心の中のつぶやきだ。だいたい私はこんな言葉遣いをする女性は嫌いだ。そしてこれに限らず、本書はこのような軽いノリの今どきの表現に満ちている。そういう文章を書く作家が好き…

正しいことと親切なこと、選ぶなら親切なことを。映画『ワンダー』

ネットフリックスで映画『ワンダー 君は太陽』を見た。難病物はあからさまなお涙頂戴であることも多いので少々構えてしまったが、安っぽさに流れない気持ちの良い作品だった。評価の高さも頷ける。 遺伝子の突然変異のため、顔面の骨格が未発達で生まれてし…

芸能・文化の力に酔う『仏果を得ず』三浦しおん著

高校時代、健(たける)は教師たちには「グレている」「要注意の生徒」と見られていた。その高校の修学旅行で、狭い国立文楽劇場の座席に縛り付けられるようにして鑑賞することになった文楽。前夜も大阪のホテルを抜けだし、仲間と遅くまで道頓堀界隈をぶら…