本・動画感想
いままで、勝手な先入観から韓流ドラマはいっさい見なかったのだけれど、次男の「『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』っていうの、面白いよ」という言葉に抗えず、ネットフリックスで視聴してみた。 自閉症スペクトラムの女性弁護士が主人公のドラマで、放送した韓…
「女が生きるのに、男はいらない」。この物語の書き出しの一文だ。古風なタイトルと装丁なのに現代ものかと思った。けれども、関ケ原の戦いの時代を背景にした、女の物語だった。 主人公は近江と美濃の境にある伊吹山のふもとの薬種問屋不破屋の女主人「とき…
四日市の進学校、八稜高校(通称ハチコウ)に迷い込んだ白くてムクムクした犬。生徒会長の藤原貴史、美大を目指す早瀬光司郎、石窯パン工房の娘塩見優花の3人は里親を探すが思うように見つからず、学校側と掛け合い、校長の許可を得て学校で飼うことになる…
365ページの本に24の物語。短編集と言うよりショートショート集。一つの話の中のほんの端役で登場した人が、次の物語の主人公になる。どんな人もその人の人生では主役であり、いろんな人にいろんな人生があるんだなあと、当たり前のことに気づかされ、そして…
『ミラノ 霧の風景』など名文で知られる須賀敦子さんの不思議な作品。児童書のような体裁であるが、これはやはり大人のために書かれた本だ。でも、こどもの心をすっかり失くしてしまった人には、響かないかもしれない。 ふとい鉄のくさりをひきずりながら、…
昨年11月にリクエストした。ネットで検索して何十人も順番待ちしていると知ってはいたが、それでも、途中で忘れられてるのでは?と心配になって、市民館で確認してしまった。それがこの本『お探し物は図書室まで』である。 借りていた本を返却に行ったとき、…
漫画家で文筆家だった杉浦日向子さんのエッセイ集。2005年9月の発行なので、亡くなってすぐに出版されたもの。私にとっての日向子さんは、NHKの『コメディーお江戸でござる』の解説者だ。漫画も著書も読んだことはなく、作品に触れるのは今回が初めてのこと…
今週は見守り当番。先ほど、プール道具の大きなバッグをぶら下げ、のんびりのんびり歩く1年生らしい最後の児童を見送って家に戻り、つい、冷凍庫のハーゲンダッツをご褒美に食べてしまった。私は夏でもあまり冷たいものは飲みも食べもしないのだけれど・・・。…
とりあえずという感じで録画しておいた、深夜の映画『幸せなひとりぼっち』を観た。内容は知らず、題名とスウェーデン映画という所に惹かれただけだったが、これが大変な掘り出し物だった。 主人公は、半年ほど前に最愛の妻ソーニャに先立たれた59歳のオーヴ…
東野圭吾さんの加賀恭一郎シリーズ10作目の作品で、ずっと謎だった彼の母親が家を出た理由もついに明らかになり、加賀が日本橋署に移った理由など、今回の事件とともに、これまでのさまざまな疑問が解明される。 読んでいる途中でなんだか覚えのある部分があ…
表紙カバーに7つの浮世絵。安藤広重「目黒太鼓橋夕陽の岡」、歌川国政「五代目市川團十郎の暫」、歌川国貞「集女八景 粛湘夜雨」、鈴木晴信「縁先物語」、葛飾北斎「百物語 さらやしき」、喜多川歌麿「深く忍恋」、東洲斎写楽「二世市川高麗蔵の亀屋忠兵衛…
元々はWOWOWの作品のようだけれど、私はネットフリックスで視聴。これほどまでに正統派の端正な経済ドラマを久々に観た。 池井戸潤さんお得意の銀行を舞台とした物語。けれども大ヒットした『半沢直樹』のような、クセの強い人物も、デフォルメされた悪役も…
コロナ禍中の2021年の序章から始まり、2011年の第1章から2021年の終章まで、10年間の兄妹の物語が、兄と妹交互の視点で語られる。 兄妹の父は他の女性のもとに去り、母親は料理の仕事で売れっ子になり不在がち。そんな中、二人はガラス工芸家の祖父の手で育…
久々の有川さんの作品。けれどもこれは、著者のデビュー作で電撃ゲーム小説大賞を受賞した『塩の街』の次の作品で初期のものだ。よって、著者名は有川浩(現在は有川ひろ)。 近未来が舞台で、年号は200X年と記されている。今となっては過去の年号になってし…
またしても素晴らしい本に出合ってしまった。これだから読書はやめられない!と感じさせてくれた。著者はこんなに印象的な名前で、2007年にすばる文学賞を受賞後すでに著作も随分出ているようなのに、全く知らなかった。本作は今年の3月に出版(初出は昨年…
この著者のことを、警察官や探偵が主人公のミステリーを得意とする作家だと思っていたが、結構スケールの大きな冒険ものも書いているようで、本作品は、冒険まではいかないが、その範疇に入る作品だ。2014年に松山ケンイチ主演で映画化もされているらしい。 …
初めての著者。1953年生まれで私より2歳年下なのに、7年前に62歳で亡くなっている。せっかく良い作品を書く作家さんを知ったと嬉しく思ったのに、もう新しい作品は生まれないと思うと残念だ。 江戸時代に実際に売られていたという占いの本『女用知恵鑑宝織…
先日読んだ『サイン会はいかが?』が良かったので、同シリーズの最初の作品である本作をリクエストしておいた。届いたという連絡が市民館からあり、早速受け取り、そして読了した。 駅ビル6階に位置する成風堂書店を舞台に、正社員の木下杏子と法学部学生で…
少し前からヒノキの花粉が飛び始めたことを感じてはいたが、今日は私としてはいささか症状がひどく、目のかゆみの他に、くしゃみが連続して出てしまう。 で、家の中だというのにマスクをしている。 可愛いマスク猫ちゃんみっけ! (MONOTONEさんのサイトから…
図書館を舞台にした小説にはつい手が伸びる(ただ、前回読んだ作品『ツクツク図書館』は私には残念だったけれど)。そして、図書館と同じように、本屋さんを舞台にした物語と言えば、『ビブリア古書堂』を上げるまでもないくらい、本が好きな人間には訴求力…
くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨の降る 窓外を眺めているうち、なんとなくこの歌が浮かんだ。まだバラは蕾を持つどころではないので、子規がこの歌を詠んだのは、もう少し季節が進んだ頃合いだろうけれど。 雨が多くなった。ひと雨ごとに…
判じ物のような今日のタイトルは、暗号である。今読んでいる、北村薫さんのベッキーさんシリーズ最初の作品である『街の灯』にこの暗号が登場し、ドラマ『ミステリと言う勿れ』で門脇麦さん演じるライカの使う暗号と同じだと、思わずニンマリしてしまった。 …
ちょっと癖のある文体で書かれているので、これに馴染めるかがこの本を読み進めるかどうかを分けるだろう。私も読み始めてしばらくすると文体にあてられたような気分になってしまい、本を置いた。先が知りたいからと言って、一度にあまりたくさん読まず、ゆ…
黛家は、北国の支藩とは言え、神山藩の筆頭家老を代々務める家柄で、三千石の大身である。その黛家の栄之丞・壮十郎・新三郎の三兄弟の物語で、三男坊新三郎の十七歳から、十三年後までを描く。 私が15年暮らした津軽の弘前城を思わせるような桜堤で物語は始…
昨夜ネットフリックスで映画『引っ越し大名!』を見た。 引っ越し奉行を押し付けられる、おくてで本の虫の主人公片桐春之介は星野源さんだ。星野さんはもちろんはまり役で文句なしに素晴らしいが、すべての点で正反対の人物、幼馴染の鷹村源右衛門を演じた高…
市民館の図書室に未読の北村薫さんの作品を見つければ、どうしたって借りてしまう。先日、『鷺と雪』を見つけ、いそいそと借りてきた。 時は昭和初期。まだ伯爵だの子爵だのといった階級が存在した時代の物語だ。主人公はそうした華族や皇族の学友を持つ良家…
「それぞれの中の少年を呼び起こす」と書いたが、世の中には、この人は自分が子供だったことなど絶対にきれいさっぱり忘れているな、と思わせる人もいる。そういう人には、きっとさすがの重松氏のこの名作も響かないだろう(永田町あたりにはザクザクいそう…
ネットフリックスのトップ画面に表示され、なんとなく気を惹かれて再生ボタンをクリックしたら、気持ちのあったかくなる素敵なドラマに出合えた。 以前、原田知世さん主演のドラマ『スナックキズツキ』を紹介したが、あのドラマの舞台の喫茶店をバーにしたよ…
6室のアパート「幸福荘」の大家福田幸男は、40歳であるが、小学校の低学年くらいの学力しかない。近所で総菜屋を営む幼馴染の京子とその母親だけは昔ながらの「サッちゃん」と呼ぶが、その他の人々には「ボクさん」と呼ばれている。 幸福荘は20年ほど前に幸…
勘違いから、乗るはずの便を逃し空港で戸惑う男の物語に始まって、世界各地を舞台にした物語を集めた池澤さんの短編集。出不精でいまだ自分の国を一歩も出たことのない私でも、寒中の日本に居ながらにして、南の島に行ったり、ここ以上に寒々とした北欧の空…