一昨日の夕方ウオーキングをしていたとき、先日私が珍しい花と思って紹介したバビアナの花を、庭で咲かせているお宅を3軒見かけた。
なんだ、私が気付かなかっただけで、それほど珍しい花でもなかったのかも知れない。なにしろ、知らないうちに我が家の庭にさえ芽吹いたほどなのだし・・・と思ったときに『星の王子さま』のバラの花のエピソードが頭に浮かんだ。
王子さまは自分の星に芽吹いた珍しい花をたいせつにしていた。気位が高くわがままな花は、風を防げのガラスの覆いをしろのと王子さまを振り回す。やがて自分の星を出て地球にたどり着いた王子さまは、一つの庭に五千ほども咲きそろっているバラの花に会う。そうしてあんなに気取っていた自分の星の花が、ありふれたこのバラに過ぎなかったことを知る。
このあと王子さまはキツネと会い、全編素晴らしいこの本の、さらに珠玉のようなシーンが展開する。
キツネは王子さまに話す。いま自分はあんたにとってほかの十万ものキツネと同じキツネに過ぎない。おれにとってもあんたは、ほかの十万もの男の子と別に変りない。だけど、あんたがおれを飼いならすと、おれたちはもう、おたがいにはなれちゃいられなくなる・・・。
何度読み返したかしれない物語。しかもふと思い出して本棚から取り出し、この部分を拾い読みしただけなのに、胸がキューッと締め付けられてしまう。ふるえてしまう。私のたいせつなたいせつな本。
国会中継の画面に映る首相・副首相。あの人たちは、手塩にかけてほかの十万もの何かと違うたいせつなものを手にしたことがあるのだろうかと思う。
今朝テレビをつけると一番に目に飛び込んできた光景が、連休に観光客が集まることを避けるため、国の天然記念物だというみごとな藤の花を切り取っている光景だった。美しい花にひかれて、先週末に1000人もの見物客が集まってしまったのだそうだ。私も涙が込み上げたが、作業する方のインタビューに答える声も涙声だったように感じた。先日の無残なチューリップの姿も重なった。
花も受難のコロナ禍である。
1967.10.26.の日付が残る。すっかり古びてしまったが、16歳の私が求めたたいせつな本。