あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

「消費税の増税で皆を『受益者』に」という意見

昨日久しぶりに参加したスタンディングで、Kさんに「〇〇さん、情報あげる」と声をかけられた。この方はいつも新聞や週刊金曜日など、様々な媒体のこれはと思う記事のコピーを皆に下さる。

 

今回のものは8月14日の中日新聞の記事だった。井手英策教授のインタビュー記事で、素晴らしい内容なので、新聞社のサイトから全文をお借りしたかったが、会員用記事で途中からはログインしないと読めない。

 

www.chunichi.co.jp

じきにリンクも切れるだろうが、いちおう途中までの記事を貼り付ける。

 

3年前の民進党大会での井手先生のスピーチには大変感動し、こんなエントリーを書いた。

yonnbaba.hatenablog.com

 

このあとすぐ例の緑の〇〇〇さんのお陰で民進党は分裂し、井手先生の素晴らしい理念も空中分解のようになってしまった。

 

 

ざっと記事の内容を紹介しようと思う。

*****

今の世の中には病気や失業などの「落とし穴」がいっぱいあって、運悪く穴に落ちた人を自己責任だと突き放し、生活保護などで恩着せがましく助ける社会だが、井手先生はこれが正しいあり方ですか?と疑問を突き付ける。

 

「弱者を助ける」のではなく、「弱者を生まない」世界にしていくべきだというのが井手先生の哲学だという。なぜかと言えば、「助けられる」のは人間に屈辱を刻み込むから。こういう考えが生まれたのは、氏がシングルマザーの母・独身の叔母・戦中の勤労奉仕で右腕を失った伯父などの大変なご苦労に支えられて育ったからだそうだ。

 

教育や病気、老後の備えを一人一人が貯蓄し、自己責任でやりくりする「自己責任社会」は、成長がさらなる成長を生み出した時代にはそれなりに機能していたが、バブル崩壊後は不良債権に苦しむ銀行が企業向け融資を大きく減らし、企業は自前資金で設備投資を行わなければならず、結果として労働者の賃金が削られ、勤労者世帯の実収入は97年をピークに低下し、家計の貯蓄率も97年に11%程度あったものが2010年代には2%程度にまで下がった。

 

19年の厚生労働省の調査では、世帯収入400万円未満の家庭が全体の45%を占める。これだけのお金で子どもを2、3人育て、大学に行かせ、家を建て、老後に備えて貯蓄なんてできるはずがない。それでも19年の内閣府の調査に、9割の人が生活の程度は「中」と答えている。結婚、子ども、持ち家をあきらめ、やっと「中流にしがみついている」のが現状だ。

 

今の日本を覆う不安は、経済成長や所得が増大し続けることを前提につくられた社会の行き詰まりに本質的な原因がある。

 

そして、それを解決するには、「頼り合える社会」への転換だと訴える。病気にならない人はいないし、介護を必要とし、障害が生じる可能性は誰にでもある。これらのサービスを「ベーシックサービス」と名付け、所得制限を外してみんなに提供していく。財源は税。経済協力開発機構OECD)の平均より少し上くらいの国民負担で可能。そうすれば、貯蓄がなくても誰もが安心して暮らせ、弱者を生まない社会をつくることができる。

 

その中心となるのは消費税で、これに所得税の累進度を高めたり、相続税を引き上げたりして、税全体の公平性を担保する。中高所得層は負担者から受益者に変わる。貧しい人たちも税を負担する。受益の喜びと負担の痛みを分かち合うことで、生活保護の利用者に対するバッシングのような憤りやねたみがなくなり、社会の分断が防げる。

 

しかし消費税の増税は簡単ではない。最近の二度の国政選挙では増税を訴えた方が圧勝した。ポイントは、増税分の使い道をはっきり示すこと。新型コロナウイルスによる経済への打撃を和らげようと、消費税率を一年間限定などで5%引き下げようとの議論が出ている。所得に応じて全世帯を五等分すると、一番低い階層の年間消費額は約160万円。5%減税で約8万円返ってくる。しかし最富裕層の消費額は約470万円だから約24万円の減税だ。本当にこれでいいのだろうか。

 

減税するぐらいなら一年間限定で減税分の14兆円の国債を発行し、大学と介護を無償化したり、医療費の自己負担を軽減したりと、ベーシックサービスの充実に使ってはどうか。単に減税してもその分は国債で穴埋めするのだから政府にとっては同じこと。税の具体的な使い道を実感してもらった上で、一年後に無償化をやめるか、増税して続けるかを国民に問えばいい。

 

「政府の無駄遣いをなくすのが先だ」という声がすぐ上がるだろうが、日本は労働者に占める公務員の割合がOECD諸国の中で最下位。世界的に見てもかなり「小さな政府」だ。防衛費を削れとの指摘もあるが、18年度と比べ40年度(20年後)には70兆円も社会保障費が増えると言われる中、次年度以降の支出が決まっている分も含めて10兆円程度の防衛費を削ったところで限界がある。

 

ベーシックサービスの実現には1%の税で2.8兆円と担税能力が高い消費税の引き上げが不可欠。事実、平等な社会をつくっている先進国は消費税率が高いことが知られているとの井手先生の主張には、非常に共感を覚える。(記事の引用終わり)

 

 

減税は選挙民受けがよく、増税を言い出せば支持者に離れられる・・・というポピュリズムで目先の票を集めていては、国の病状は進むばかりだ。政治家も井手先生くらい明確に将来のビジョンを示すとともに、必要となる痛みを提示して欲しい。もちろんそのためには、「その説明を理解するだけの知性が国民の側にあること」が必要だが、それが欠けているからといつまでも「幼児番組」ばかりでは、いっこうに学習は進まない。

 

 

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