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あったかいものに包まれる『呼んでみただけ』安東みきえ著

書棚に並んだ『呼んでみただけ』というタイトルに、なぜか目が留まった。取り出してみて、やさしい表紙に一目ぼれ。迷わず借りることにした。

 

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装画と挿絵は藤本将さんというイラストレーターの方。

 

お話を作るのが上手なやさしいママが、お話を聞くのが大好きな息子に語る12の物語。なんとも不思議で、そのくせ懐かしいような読み心地のする本だ。懐かしいのは、自分が子供たちに読み聞かせをした遠い日々。そうそう、子供はあっという間に手の中から羽ばたいていってしまう。

 

私はものごころがついたらもう自分で本を読んでいたし、昔のことでもあり、親に読み聞かせをしてもらった記憶はほとんどないけれど、父親の膝に抱かれてゆらゆらしながら歌を歌ってもらったころの、あのあったかい心地よさの遠い記憶もよみがえる。

 

遊太を見ていると、ママは時々ふしぎな気持ちになる。

いったいこの子はどこから来たのかしら、と。

6年前の朝、自分のところにやってきた子。生まれた時、必死で世界につかまろうとするように、赤くて細い手を広げていた子。いったいだれとどんな約束をして、自分はこの小さな男の子を手に入れたのだろう。

遊太とはずっと一緒にいたような気がする。ずっと昔・・・自分が生まれる前から。

そして、ずっと一緒にいられるような気がする。この先も永遠に。

もちろん、そんなわけはないのだけれど。

 

と始まる。ああ、そうそうと、母親になった人なら多かれ少なかれ共感を覚えるだろう。ずっと一緒。ずっと一緒にいたい。でも、今は全身で私を求めてくれるこの子に、いずれ私より大事な人が現れる・・・と、チクリと心が痛んだ日があったっけ。

 

12のお話のどれもどれも良いけれど、クラゲが星に伝えたかった大事なことばが、進化する生物から生物へと伝えられていく『星に伝えて』、金魚が池のそばで泣いているこねずみをなぐさめようとする話『冬の花咲いた』、動物園の真下に住むモグラの、誰にも知られない活躍の話『モグラのねぐら』などは、特にじんわりとした読後感に包まれる。

 

 

読む人を選ぶかもしれないけれど、この本の良さは読んでいただく以外、うまく伝えられないような気がします。