あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

エンタメに励まされ

芸能界で悲しいニュースが続き、コロナで暗くなりがちな心がさらに沈みがち。そんな時だからこそ、芸能に慰められる私の日常を書き留めたい。

 

楽しみなドラマが始まった。たった5回の連続なので、あっという間に終わってしまう。今週末はもう折り返し点になるので、ご興味のある方はお忘れなく!

 

NHKの秀作の多い枠「土曜ドラマ」。コロナで撮影が止まり、3か月以上遅れて先々週からスタートした『天使にリクエストを~人生最後の願い~』だ。主演は江口洋介さん。少し白髪の入った髪をパサつかせて、元刑事のやさぐれた探偵を演じている。

 

刑事だった主人公が容疑者を追い詰めるなか、苦し紛れに暴力団員の容疑者が発射した銃弾が、不幸にも居合わせた主人公の息子に命中し彼は子供を失う。夫を責めて妻は去り、彼は刑事を辞め探偵となるが、酒浸りでまともに仕事もしていない。

 

そんな彼の前に謎の老婦人(倍賞美津子)が現れ、死期の近い友人の願いをかなえて欲しいと依頼する。自分の仕事ではないと探偵は断るが、彼女は「あなたにしかできない仕事だ」と言い、前金として300万円の小切手を渡され探偵は依頼を引き受ける。

 

私が「シワを魅力にした稀有な日本の女優さん」として、いつも真っ先に挙げる倍賞美津子さんの出演も嬉しい。『つばき文具店』では地味な和服姿だったが、今回は裕福そうで品の良い洋装の倍賞さんだ。

 

2回目の先週はその依頼者の末期がんの友人(梶芽衣子)を、看護師(志尊淳)付きで医療機器を備えた車に乗せ、彼女の希望する富士の裾野の養護施設を訪れ、60年前に彼女が捨てたと思われる男と会わせるという物語だった。

 

彼女が赤ん坊を捨てた回想シーンでは、高校にも進学できなかった彼女の背景に、恵まれて大学生となり、60年安保の活動をする学生たちが描かれていた。先日のセネシオさん(id:cenecio)のエントリーの、ドストエフスキーを知らないという現代の学生のことがふと頭に浮かんだ。当時の大学生は、結果的に間違った方向に行ってしまったが、本も読み、社会のことを我がこととして考えていたように思う。

 

ワゴン車の中で探偵の助手(上白石萌歌)が、病人のリクエストで「アカシアの雨が止むとき」を歌うシーンもあり、懐かしい昭和があちこちにあふれる。

 

生まれてすぐに捨てた子との60年ぶりの再会がどのような思いなのか分からないし、まして捨てられた子(六平直政)の思いはさらに分からないが、ドラマの描いた母と子の思いは悲しく美しく、エンタメとしては優れていた。

 

なお、私は未見だけれど松田優作さんの『探偵物語』で、若き日の倍賞美津子さんが松田さんの探偵さんをやり込める弁護士役を演じていらしたとかで、そのあたりを知っている方にはいっそう面白いかも知れない。

 

またドラマに登場する医療機器を備えた車「エンジェルカー」は、ターミナルケア(終末期の看取り)を受けている方を対象に、 その方が望む場所へと無料でお連れする実際のボランティア活動の「願いのくるま」をモデルにしているそうだ。

 

 

この他にも、同じNHKで私の大好きな『赤毛のアン』も始まった。気持ちの塞ぎがちな時だけれど、好きな物語や好きな俳優さんのドラマに、大きな慰めをもらっている。

 

 

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