レビューは良かったと思うものについてだけ書こうと心掛けているのだけれど、あまりに自己中心的な母親に腹立ちが収まらないため、書いてしまうことにした。
著者と作品名は書かないが、人気作家の人気の作品なので、読んだ方なら「あれだな」とお分かりになるかもしれない。好きな方もたくさんいらっしゃるだろうけれど、これは我儘な私の勝手な感想なので気にしないでいただきたい。
一番気になってしまったのが喫煙だ。妊娠の可能性がある時も、そしておそらく妊娠中も、もちろん子育て時も、常に、かなりの煙草のみの母親なのである。
そのうえ、あろうことかこんな描写シーンがある。
ママはピアノの前にすわって、右手に鉛筆、左手に煙草をもっていた。鉛筆も煙草ももったまま、あたしを膝に抱きあげて訊いた。
―ここが気に入ったの?
煙草を指に挟んだまま子供を抱きあげるなんて!
運命の恋をし、その恋人に去られ、おそらくは精神を病んでしまったのであろう母親。その母に育てられ、そんな母をすなおに真っすぐ受け入れていた幼い娘も、だんだん自立していく。
激しい恋をして狂気の人生を生きた女性の物語なのだから、喫煙や、お酒に酔って結ばれ、その結果生まれた命だと当の娘に話すなんて!とか、ほぼ1年ごとの気ままな引っ越しで振り回すなんて!とか、あげつらうのはナンセンスなことだ。私が、物語として距離を置いて冷静に楽しむことができなかったというだけのことだ。
楽しい時間を過ごすためにする読書なので、いつもなら、合わないと思えば早々に見切りをつけるのだが、今回はそのうち流れが変わるのかも・・・という期待を抱いて付き合い過ぎてしまった。
救いだったのは、娘が母と違う地に足をつけたしっかり者に育ち、母親に振り回される「旅がらす」の生活に自分できちんと区切りをつけ、健康な人生に旅立って行けたらしいことだ。少々不安を残す結末ではあるけれど、この賢い娘なら、きっとそれも乗り越えていってくれると信じる。
今日のお昼は分厚いカツサンド(できあい)。