あとは野となれ山となれ

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オオタトオルさん、次の著作を待ってます!

『草葉の陰で見つけたもの』という、著者二十歳(はたち)の時の作品を読んだ。工業高校を出て勤めた会社を辞め、初めて書いたこの作品で、いきなり小説宝石新人賞を受賞したという作品だそうだ。

 

受賞作である表題作と、『電子、呼ぶ声』という2つの作品を収録している。『草葉の・・・』は戦国時代、『電子・・・』のほうは近未来を舞台にしている。

 

『草葉の・・・』は、織田信長の屋敷に盗みに入って捕らえられ、斬首ののちさらし首にされた、その「首」が主人公という変わった設定である。そして通常であれば最もそのようなものを忌まわしく思いそうな若い娘が、なぜか足しげくその首の前に通い語り掛ける。

 

恵まれない暮らしの娘は、一日の労働の後に「首」を訪れ語り掛けることで、かろうじて自分を保っているらしい。一方、生きていた時から人間らしい暮らしとは縁遠かった「首」の方は、自分を恐れもせず毎夜語り掛ける娘に次第に温かな思いを抱いていく。

 

とんでもない設定ながら、「首」の細やかな心情描写にひかれて読んでしまい、おぞましい絵づらであるはずの物語ながら、結構心地よい読後感を得る。

 

『電子・・・』のほうは、裕福な暮らしができる人間と、非人間的ともいえる状況で狂暴化している貧しい人間とが居住区を分けて暮らす近未来、裕福な人間は家事や警備のロボットを使用する。

 

母親を亡くした2人の娘を持ち、仕事で不在がちな父親は、家事と娘たちの警護を兼ねて一体のロボットをレンタルする。そのロボットの視点で、契約期間の1か月の出来事を綴るのがこの作品だ。

 

映画などで何度も描かれてきたような話だけれど、学校に行くことを拒否しロボットを受け入れようとしない姉のマユミと、人懐こく(人ではなくロボット相手ではあるが)なじむ小学生のエナの姉妹の描写や、心を持たないロボットの独白に魅力があり、一気に読み進み、予測できる展開ながら結構感動してしまった。

 

この本の出版から13年、まだ著者の次の作品は出版されていない。書き続けているのか、書けないでいるのか分からないが、この2作品を読んだ感じでは弱冠二十歳の作とは思えない力を感じさせ、次の作品を読んでみたいという気持ちになった。

 

 

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