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もうどうにも止まらない『消滅』恩田陸著

今日は筋トレもウオーキングもさぼってしまい、いつもなら夜は読書をしないことにしているのだけれどそれも破って、山本リンダさん(若い人は知らないだろうな)じゃないけれど、もうどうにも止まらない~♪という状態だった。523ページの分厚い本を一気読みしてしまった。新聞小説だったようだから、読者はさぞかし翌日のストーリーが気になったことだろう。

 

恩田陸さんの『消滅』。舞台は現代、よりちょっとだけ先あたりの未来だろうか。9月30日の午後から翌朝までのとある空港(成田ではないらしい)の一隅でのできごとだけを描いている。『夜のピクニック』といい、この著者はたった半日や一日の出来事を長編小説にしてしまう名手だ。

 

ある空港の入国カウンターで、11人の男女(子供1人を含む)が入国を拒否され、どうして紛れ込んだのか1匹のコーギー犬とともに別室に連れていかれる。折しも外は日本列島をすっぽり包んでしまうほどの暴風雨圏を持った巨大台風が接近し、昼なお暗く強風が空港のガラスを叩いている。

 

別々の便で到着した乗客たちだが、当局がつかんだ情報によると、その日の午後の便で最後のメンバーが到着次第、「消滅」というコード名のテロが決行されるらしい。そしてそのテロリストの可能性を有しているのが、その11人だった。

 

やがて別室に隔離されたなかの1人が、彼らを監視するための精巧に作られたアンドロイドと分かり、そのアンドロイドから、テロリストを見つけ出さない限り解放されないと告げられ、窓もない部屋に閉じ込められた人々の交流や疑心暗鬼が始まる。

 

巨大台風、通信回線の途絶え、そして次第に隔離された仲間の中に、テロとは別の不穏なものが見えてくる。アンドロイドも時々底知れない表情を見せる。誰がテロリストなのか、隔離された人々は無事家路につくことができるのか・・・。

 

怪しいことばかりが積み重なっていって、最後の最後で一気に謎が解け、それまでの伏線も回収される。しかし、実は大きく切実な問題が一つ解決されない。まあ、それは登場人物たちも魅力的な人が多いので、その中の誰かを主人公に続編が書かれることを期待しよう。

 

驚いたことに、この物語の中に世界のあちこちでぽつりぽつりと発生している謎の感染症として、「新型肺炎」「コロナウイルス」という言葉が出てくるのだ。思わず奥付を確認してしまった。2015年の発行である。恩田さん素晴らしいストーリーテラーであるばかりでなく、予知の能力までお持ちなのか?

 

 

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