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正しいことと親切なこと、選ぶなら親切なことを。映画『ワンダー』

ネットフリックスで映画『ワンダー 君は太陽』を見た。難病物はあからさまなお涙頂戴であることも多いので少々構えてしまったが、安っぽさに流れない気持ちの良い作品だった。評価の高さも頷ける。

 

遺伝子の突然変異のため、顔面の骨格が未発達で生まれてしまったオギー少年が、やはり学校という集団の中で学ぶ必要があるという母親の考えで、家庭での個人学習から5年生で学校に入学して経験した日々の物語だ。

 

それまで家から出るときにはお気に入りの宇宙飛行士のヘルメットを着けていたオギーだけれど、学校ではそういうわけにはいかない。案の定好奇の目を向けられいじめも受ける。ただ一人仲良くなれたと思ったジャックも、ハロウィンの日、級友たちの前でオギーの悪口を言っているのを目撃してしまい深く傷つく。

 

両親はもちろん、オギーの姉ヴィアも弟思いの優しい姉だ。けれども、難病の弟にかかりっきりで、母の目が自分に向くことがないのを寂しく思っていた。親友のミランダが支えだったが、なぜか新学期に再会した彼女は髪をピンクに染め、すっかりヴィアに対してつれなくなっていて、彼女は混乱する。

 

親しくなった男子学生に誘われヴィアは演劇サークルに入るが、そこにはミランダもいた。発表会の配役なども絡んで雲行きが怪しくなり、ヴィアにも厄介なことが起こるのかと心配したが、ミランダは思いもかけない行動にでる。

 

オギーに対するいじめもヴィアの友人との問題も、心配したほど重大にならず物語はハッピーエンドになる。実際はこんなに甘いものではないという当事者の声もあったようだが、事実をそのまま描くことが良いというものでもない。

 

それでなくても、私たちは日々目をそむけたくなるほど陰湿で陰惨な事件を見聞きしている。映画を見ながら、私も現実には(特に悪いことは隠蔽したがるこの国では)こんなに簡単にいじめ問題は解決しないし、いじめの内容ももっと悪質だろうと想像した。そう、私たちは現実の大変さも知っているし、想像することもできるのだから、だからこそフィクションの世界は救いがあってもいいと思う。

 

この映画がもっと現実的にいじめや人間関係を暗く描いていたら、見る人はもっとずっと少なかったかもしれないし、評価も違っていたと思う。そして、この作品のもう一つの良いところは、単純な善悪の描き方にならなかったところだ。

 

困難を抱える両親のため、手のかからない良い子を演じる姉の心の闇。オギーの見た目にはすぐに慣れて、その奥にある彼の良さに気付きひかれながらも、級友の前では「空気を読んで」オギーの悪口を言ってしまうジャック。親友のヴィアの温かな家庭に、嫉妬を感じてしまうミランダ。そして、オギーには優しいが、夫にはちょっと横暴なジュリア・ロバーツ演じる母親。そんな、妻のおしりに敷かれる、優しいけれど少々頼りない父親。みんな二面性を抱えている。

 

映画はめでたしめでたしで終わるけれど、現実はそのあとも続いていき、もしかしたらさらにひどい困難が待っているかもしれないことを私たちは知っている。でも、簡単にはいかない人生だからこそ、私たちは目の前の選択で迷ったとき、簡単なことよりは困難なことを、正しいことと親切なことなら親切なことを、選ぶ努力をしなくてはいけないのだろう(これはオギーの担任の先生が生徒たちに紹介した格言)。そういうことの積み重ねが、この世界を作っていくのだ、たぶん。

 

 

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