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なぜこうも愛おしい『麦本三歩の好きなもの 第二集』住野よる著

「常識人ぶってる方がやべー奴なのだ」主人公の三歩、図書館勤務25歳女性、の心の中のつぶやきだ。だいたい私はこんな言葉遣いをする女性は嫌いだ。そしてこれに限らず、本書はこのような軽いノリの今どきの表現に満ちている。そういう文章を書く作家が好きではない。

 

・・・のはずなのに、ちょっと違えば途中で脱落したかもしれないような作品なのに、なぜか楽しく読み終え、そのうえ主人公の三歩が愛おしくてならないのだ。いつもおどおどしてしゃべれば嚙みまくり、動けばコケているような主人公が、うるさくなるどころか愛すべきキャラクターに感じさせてしまうのは、物語を紡ぐ著者の絶妙な匙加減だろう。

 

「優しい先輩」や「怖い先輩」、「おかしな先輩」(主人公以外すべて固有名詞なし)などに囲まれ、ドジをしながらもこの3年間一番の新米という位置にのほほんとしてきた三歩だが、ついに後輩が出現する。しっかりしなくてはと思えばさらに緊張し、相変わらず呆れるほどダメダメな日々である。そんな三歩の、おかしな失敗はあれど取り立てて大きな出来事もない日常が綴られる。

 

主人公のダメっぷりに時に声を出して笑ったりしながら、合コンで出会った彼とのお付き合いが、どうかうまくいきますようにと祈らずにはいられない。やっかいな図書館利用者に出くわさないようにと願う。要領の悪い子を持った親か祖母の気持ちだ。

 

知らない著者名だったが、『君の膵臓をたべたい』でデビューした方だそうだ。この印象的な作品名は知っている。小説も未読、映画も未見だけれど、この作品を読んで、『君の・・・』も読んでみようかと興味がわいた。

 

余談だけれど、この作品の中に「麦本三歩は辻村深月が好き」という章があり、偶然にちょっと驚いた。なんと、今回私が市民館から借りたもう一冊の本が、この辻村深月さんの作品だったのだ。これもなかなか良かったので、また感想を書きたいと思っている。

 

 

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