あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

鯖猫長屋8巻まで読み進む

『ねこだまり』という猫にまつわるアンソロジーで出合った田牧大和さんの作品『鯖猫長屋 ふしぎ草紙』シリーズ、本日第8巻を読了した。昨年12月に出版された9巻もリクエストしてあったのだけれど、貸し出し中で残念ながらまだ手元に届いていない。

 

わけあり絵師とサバの縁を知る『鯖猫長屋ふしぎ草紙』田牧大和著 - あとは野となれ山となれ

 

バラエティ豊か、猫にまつわるアンソロジー『ねこだまり』 - あとは野となれ山となれ

 

長屋の名前に冠されるほどの不思議な力を持つ雄の縞三毛サバが、今回は霊力を失ってしまったの?とちょっとハラハラさせるが、相変わらずの男前ぶり。妹分の雌の縞三毛のさくらも、あどけない気性を残しながらもサバの薫陶を得て賢く育っている。

 

サバの周囲の大切な人たちに次々危難が降りかかり、果ては鯖猫長屋そのものが狙われ炎を吹きかけられる。この巻でサバと売れない猫絵描きの拾楽が対するのは、千里眼を持つ白い鴉を連れた、真っ白な髪に片方が紅の目を持つ「天狗の子」とされる少年だ。

 

いつもながらこの著者の描きだす悪者は、悲しい背景を持つ。今回の「天狗の子」は年若いだけさらに不憫さが募る。鯖猫長屋の面々や、無情そうにふるまいながら実は情け深く弱いものに肩入れし、猫にもめっぽう甘い定廻同心の掛井十四郎たちの情けある収集のつけ方が心にしみる。

 

上に立つ人々に、弱い立場の者に対する情けが毛ほども感じられない現実を日々見せつけられうんざりしているので、ドラマを見たりフィクションを読むひと時は、せめて胸のすく勧善懲悪や人の情けの温かさに救われたい。

 

 

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