あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

外からの人が拾い上げてくれる日本の宝石

今年の2月にBSプレミアムで放送された番組らしいが、このほどEテレで放送されたものを見た。『カールさんとティーナさんの古民家村だより』。

 

番組の紹介ページから

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新潟の限界集落を、ドイツ人建築デザイナーのカールさんがよみがえらせた。朽ちかけた空き家を次々に再生。美しい古民家が多くの人をひきつけ、子育て世帯も増えてきた。和洋折衷の心地よいインテリア、湧水を引いた庭でのガーデニング、育てた野菜を使って妻ティーナさんが作るとびきりおしゃれな料理。移住してきた人々も、集落の人たちとともに、豊かな自然の中でそれぞれの暮らしを楽しむ。「奇跡の集落」のひと夏を描く。

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カールさんの父親は、カールさんが生まれる前に第二次世界大戦で亡くなってしまったそうだが、日本文化の愛好家で、遺品の中にブルーノ・タウトの『日本の家屋と生活』という本や浮世絵・根付などがあり日本への興味を募らせたのだそうだ。

 

日本への興味はやがて空手につながり、そのために訪れた日本で古民家を知り、その美しさにうたれ、建築の仕事につながっていく。日本とドイツを行ったり来たりする生活ののち、リタイア後に暮らす地として日本を選び、独断で新潟県十日町限界集落となっていた竹所の土地を買ってしまう。

 

妻のティーナさんは日本イコール東京と思っているから激怒したそうだが、とにかく一度見てほしいと言われてやって来たところ、6月下旬の雨の竹所集落の風景に「今までで一番素晴らしい場所だった」と感激してしまう。

 

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カールさんとティーナさんの暮らす、茅葺屋根とピンクの壁の双鶴庵。築120年以上の古民家をいったん解体後に組み直したもの。日本式の庭園も、石灯篭や岩をカールさんが自分で運んで造ったのだそうだ。

 

 

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ティーナさんが魅せられた竹所の風景。

 

カールさんが24歳で空手のために初めて日本に来た頃は、まだたくさん古民家も残っていたが、その後どんどん壊されてしまった。日本人はなぜ手の中の宝石を捨てて、砂利みたいなもの(20年とか30年で使い捨てにする現代の建築)を拾うのかと残念でならなかった。

 

少しでも古民家を残したくて、カールさんは竹所に残るものを自費で再生していく。やがてその古くてモダンな家に住みたくて、都会からのリタイア組や子育て中の若い人たちも移り住んでくるようになり、たった9世帯の限界集落だった村に、今は子供の声が響く。

 

平家の落人が隠れ住んだと言われる、陸の孤島のように不便な四国の山奥の美しさを見出し、そこの古民家を再生して住み始め、その後日本のあちこちで古民家の再生で街の活性化に貢献しているのも、アメリカ人のアレックス・カーさんだ。

 

陶芸や漆器などに魅せられて、その技術をつないでいる外国人もいる。外から来た方たちが、日本の技術や繊細な美に気付いてくれるというのはありがたいことだ。日本人はかえって日本古来の良いものに触れる機会もないまま、こうした素晴らしい働き方もあることが分からないのかもしれない。国にとっても、若者にとっても、もったいないことだと思う。

 

 

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居間でくつろぐご夫妻。冬は積雪3メートルという所だけに、断熱材をしっかり入れて、床暖房、窓はペアガラスとのこと。吹き抜けの大きな空間でも、冬も快適に過ごせるそうだ。

(画像は上の2枚はカールさんの会社のサイトから、3枚目は東洋経済ONLINEさんのサイトからお借りしました)