あとは野となれ山となれ

新しい年に少しでも希望の光がさしてほしいと願います

こんなせつない愛の形も・・・『明日、世界がこのままだったら』行成薫著

市民館の新刊のコーナーにあった本。2021年9月30日発行とある。借りて読んでいることもあって、あまり新刊本には縁がないので、せめてこのコーナーの本はなるべく手に取るようにしている。

 

そんなわけで、新しい本ということ以外特に期待もなく読み始めたのだけれど、面白い設定と、つい肩入れしたくなる優しい二人の登場人物に引き込まれ、夢中で読み進んだ。

 

 

出版社のサイトのあらすじ:

*****

ここは生と死の「狭間の世界」。
あなたと私、二人だけの。

目覚めると、世界に二人きりとなっていたサチとワタル。二人の部屋はいびつにくっつき、誰もいない街は静まり返っていた。
そして不意に現れた管理人を自称する女に、ここは生と死の「狭間の世界」だと告げられる。二人の肉体は、今まさに死を迎えようとしている、と――。
そのまま「完全なる死」を迎えるはずだった二人だが、奇跡的に現実世界へ戻るチャンスが訪れる。
残酷な選択とともに。

私は、俺は、何のために、誰のために生きるのか。
生きることを真摯に見つめるエモーショナルな長編小説。

*****

 

 

弁護士の父と専業主婦の母、裕福な家庭で何不自由なく育ったサチと、難病の父を抱え一家の大黒柱となって働く母を、長男として小さなころから助けることを当然として育ったワタル。対照的な生い立ちの二人だけれど、優しさは共通している。両親の愛に背くことなど考えられなかったサチの優しさと、他者のために自分を犠牲にするのを当然のこととして受け入れてきたワタルの優しさ。

 

その優しさが、相手を思うがゆえに、生死を分かつ瀬戸際で残酷で皮肉な結果を生んでしまう。

 

どうしてこんな優しい若者たちが、こんなに過酷な目に遭わなければいけないのか。良い人ほど早く逝くという言葉もあるが、実際、権力にしがみつくご高齢の政治家の放言のニュースなどを目にするたび、こうした人たちばかりが生き残っていく世の中を考えてぞっとする。

 

これから読もうと思われる方のために、あまりストーリーには触れないでおく。矛盾だらけでとげとげしくて、人を蹴落とすくらいの気持ちがないと生きづらそうなこの世界で、これからの人生を生きていかねばならない、たくさんのサチやワタルを想像しながら、読んでみてほしいと思う。

 

 

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