放送中に、同じドラマを三度も取り上げるのは珍しいことだけれど、どうしてもこれは書いておきたい。
『鉄オタ道子、2万キロ』の第8話の録画を見た。今回は栗原類君演じる甲斐君が、憧れの旅ライター「Yui」さんに遭遇することを期待して、いかにもさびれていそうな、JRの日本最南端の駅西大山駅に行く。ところがそこには意外にも観光客が結構いて、「Yuiさんはこういうにぎやかな場所には来なそうだな・・・」とつぶやくシーンがあったのだ。
来なそう!いいですねえ、栗原君、脚本家さん(複数いるがこの回は市川榮里さんという方)。
近頃は小説家でも「来なさそう」と書いている人が珍しくない時代なので、嬉しくなってしまった。
売れなさそう、走れなさそう・・・など、日々いっぱい耳にしている。あまりに耳にするので聞きなれてしまって違和感を感じにくくなりそうだ。
形容詞の「ない」は「なさそう」と「さ」が入るので、これにつられて打消しの「ない」の時にも「さ」を入れてしまう人が、いまやもう、正しく言える人より多くなっているかもしれない。ということは、もう間違いと言えなくなる日も近いのだろうか。
スメ(温泉の噴気で蒸すカマ)で蒸したさつま芋を一緒に食べる、玉城ティナさんの道子と栗原類君の甲斐。
何日も前に書いていたのだけれど、ウクライナの惨状にアップを躊躇していた。でも、毎日ウクライナというわけにもいかない。こんな後ろめたいような気持なしにお気楽なことの書ける日常を、早く手に入れたい。『銀河鉄道の夜』の最後のページの賢治の言葉が身に染みる。
世界がぜんたい幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない。