あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

「見捨てられた牛―明日へ―」展を見る

グループLINEに絵画展の案内が流れてきた。幸い我が家から徒歩で行ける近さの教会が会場ということで、実に久々に絵画展を楽しんだ。

 

いや、文字通り「楽しんだ」のとはちょっと違う。

 

相模原市に住む日本画家戸田みどりさんが、ご自身も被爆の恐怖と闘いながら福島に通って描き続けた牛たちを中心とする作品は、思っていた以上に強く重く私の心を打ち、揺さぶった。気づけばハンカチで目頭をぬぐいながら鑑賞していた。

 

牛たちよ、ごめんなさい。愚かな人間のために、こんなつらい思いをさせて・・・。

 

会場には福島第一原発のこと、飼い主が避難した後に残された牛たちを世話する、吉沢正巳さんの「希望の牧場」のこと、子供たちに多発する甲状腺がんのことなどを伝えるパネルもあり、関連する書籍や写真集も展示されているが、絵画の圧倒的な力というものを痛感させられた。

 

 

 

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「聖なる光No.1」に描かれたミニーちゃんという小柄な牛は、戸田さんが牛舎を訪ねると、よろよろとそばに寄ってきて優しい瞳でじっと戸田さんを見つめたと言う。そのあと間もなくミニーちゃんは死んだそうだ。

 

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絵画展のチラシ。中央は「赤い牛」と名付けられた作品。戸田さんの怒りが、赤に込められている。左下は「被爆した牛親子」。胎内で被爆し、さらに放射線に汚染された乳を飲み草を食べ、子牛は子牛のままで短い生を終えたと言う。

 

初日の昨日は結構混雑したようだが、今日は午前中ということもあってかすいていて、係の方の丁寧な解説や、画家ご本人の福島での話などもたっぷり伺うことができた。

 

会場では吉沢さんの「希望の牧場」へのカンパも行っている。人手も資金も圧倒的に足りない中、吉沢さんは国から殺処分指示が出された牛たちを、今も200頭以上世話し続けているのだそうだ。

 

 

会場に掲げられた短歌から

原発に 勤むる一人 また逝きぬ 病名今度も 不明なるまま

除染という 仕事を与え 福島の 人らを集めて 二度傷つける 

 

被害者としてばかりではなく自省も

原発が 来りて富める わが町に 心貧しく なりたる多し

 

原発再稼働、核シェアリング・・・。

どうぞ、この牛たちの姿を見てください。