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想像を絶するものとの壮大な物語『空の中』有川浩著

久々の有川さんの作品。けれどもこれは、著者のデビュー作で電撃ゲーム小説大賞を受賞した『塩の街』の次の作品で初期のものだ。よって、著者名は有川浩(現在は有川ひろ)。

 

近未来が舞台で、年号は200X年と記されている。今となっては過去の年号になってしまうが。その200X年1月7日、国産の超音速ビジネスジェット「スワローテイル」は、国家規模のプロジェクトであり、関係者一同の期待をのせて試験飛行に飛び立った。

 

順調に航行していたが、かつてない目標高度2万メートルに到達したと同時に、スワローテイルの機体は突然爆発炎上した。

 

そしてわずか1か月後の2月12日、今度は航空自衛隊の飛行実験で、高度2万メートルに達したイーグルF15Jが爆発した。同じ高知上空の空域だった。どちらの事故も、天候・機体に問題はなく原因は不明。

 

墜落した自衛隊機のパイロットには高校生の一人息子瞬がいて、父親は転勤が多いうえに母親も早くに亡くしていたため、高知で祖父とともに暮らしていた。その祖父も昨年亡くしたった一人で暮らす瞬だが、祖父と懇意だった「宮じい」や、隣の一家が温かく手を差し伸べている。

 

その隣家には、幼馴染で同級生の佳江がいる。しっかり者で気の強い佳江は、優等生だが慎重で内向的な瞬の姉のような存在だ。

 

ある日、瞬は浜辺で巨大なクラゲのような不思議な物体を見つける。しかもどうやらそれは生きもの、であるらしい。

 

こうして始まるこの物語は、SFであり、未確認生物ものであり、青春ものであり・・・さまざまな要素を含んだ壮大な物語だ。読み進むにつれてアッと驚く展開があるため、あまり内容を紹介することができないのがもどかしく残念だ。

 

主人公の瞬を始め、登場人物も、不思議な生きものまで含めてみな非常に魅力的で、500ページ近くある分厚い本だけれど、全く長さを感じることなく夢中で読み進んでしまった。

 

現在の世界が置かれている状況に照らして考えることもできる内容で、いろいろと考えさせられる。「怪獣物と青春物足しっぱなして空自で和えてる」とはあとがきにある著者自身の言葉なのだが、言い得て妙だ。この面白さは、ぜひ読んで味わっていただきたい。

 

 

このところブログで紹介したいと思う本になかなか出合えないでいたが、今月は非常に充実した読書ができている。