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端正な物語を堪能、ドラマ『アキラとあきら』

元々はWOWOWの作品のようだけれど、私はネットフリックスで視聴。これほどまでに正統派の端正な経済ドラマを久々に観た。

 

池井戸潤さんお得意の銀行を舞台とした物語。けれども大ヒットした『半沢直樹』のような、クセの強い人物も、デフォルメされた悪役も登場しない。近頃のドラマによくある、SNSで話題になるようなあざとい演出もなければ、視聴者を引っ張る仕掛けもない。男女の愛も、何十年も昔の作品のように抑制の効いた地味なものだ。けれども、力のある脚本はここまで面白いということを思い知らせてくれた。

 

小さな町工場の息子・山崎瑛。そして、日本を代表する大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬。同じ社長の息子同士でも、家柄も育ちもまったく違うふたりは、互いに宿命を背負い、運命に抗って生きてきた。強い信念で道を切り拓いてきた瑛と、自らの意志で人生を選択してきた彬。それぞれの数奇な運命が出会うとき、逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まった――

(ebookjapanの作品情報より)

 

山崎瑛を斎藤工、階堂彬を向井理が演じる。二人は瑛の落としたロザリオを彬が拾ったことで、少年の日に会っている。長じて二人とも産業中央銀行に就職し、新人研修の最終工程の対戦で、融資を申し込む側(階堂)と銀行側(山崎)としてぶつかり、意表を突く階堂の粉飾決算という手段に対し、山崎は見事にそれを看破し、その高度な対決は銀行の語り草となる。

 

しかしそんな優秀な彼らも、実際の銀行員生活が始まると二人とも借り手の立場に立ちすぎて、先輩や直属上司には嫌われ、山崎は左遷までされてしまう。

 

一方、長男である彬が継がなかった東海郵船は次男龍馬(賀来賢人)が社長に就任するが、それを手ぐすね引いて待っていた二人の叔父に利用され、バブル崩壊という不運もあって、祖父と父が築いた盤石と思われた経営が傾きかけてしまう。

 

子供の頃から優秀な兄になんとか勝ちたいと焦ってきた龍馬は、経営が思うようにいかないことから酒におぼれ心筋梗塞で倒れる。ついに、沈没寸前の東海郵船を救うために彬は銀行を退職し社長の座につくが、すでに並大抵のことでは立て直せないほどの状況になっていた・・・。

 

 

晴れた日に傘を貸し、雨の日に取り上げると言われる銀行の容赦のなさも描かれるが、本来金融機関が果たすべき役割を貫こうとする瑛や彬の姿は爽やかだ。彬の少年時代の家庭教師で今は先輩行員の安堂(小泉孝太郎)や、頭取に上り詰める羽根田(上島敏行)らのバンカーとしての在り方も快い。

 

人生には思いがけないことがたくさん起き、時には生きていくのも大変とさえ思えることがあるけれど、家族や友人、周囲の人とのつながりが、それを乗り越えていく力になるのだと、力強く励ましてくれる物語になっている。ずっとクールだった彬社長が男泣きする最後のシーンとともに、強く心に残る作品となった。

 

今クールのドラマで、二枚目半の役どころを楽しそうに演じている向井理さんが、背広姿の銀行マンから三つ揃いに身を固めた社長という役どころで、久々に知性と品格のあふれる二枚目ぶりで楽しませてくれる。

 

 

これはドラマ版のキャストたち。この夏、山崎瑛を竹内涼真、階堂彬を横浜流星というキャストで映画が公開されるらしい。