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百年の浪漫に遊ぶ『青年のための読書クラブ』桜庭一樹著

1919年創立で、東京は山の手にある聖マリアナ学園という名門女学校を舞台とする物語。100年後の2019年、翌年から系列の男子校と合併するという、女子校としては最後の年で物語は終わっている。

 

5つの章から成り、『シラノ・ド・ベルジュラック』『マクベス』『緋文字』『紅はこべ』などの一節を引きストーリーに絡ませている。

 

第一章 烏丸紅子恋愛事件

1969年という大学を中心に世の中が騒然とした時代を背景に、生まれも育ちも名門校にふさわしいエリートながら、容姿には恵まれない妹尾アザミと、長身でノーブルな美貌を持ちながら、この学園では異質な匂いを放つ大阪からの転入生烏丸紅子をめぐる物語。アザミはこの紅子を学園の偽王子にすべくプロデュースするのだが・・・。

 

第二章 聖女マリアナ消失事件

1918年にパリから渡って来て、あちこち奔走の末翌年にこの学園を創設した聖マリアナの物語。パリでの生い立ちや6つ年上の兄ミシェルについて。そして学園での40年にわたる敬虔な生活ののち、1959年に突然失踪してしまう。その驚くべき真実・・・。

 

第三章 奇妙な旅人

1980年代後半、外の世界に吹き荒れるバブルの金色の風が、突如学園を襲う。華族を始めとする名門の子女や大企業の重役クラスの子女などの中に、新興成金の娘たちが中等部や高等部から大量に転入してくるようになった。本来肩をすくめて数年を過ごし外部受験をして去って行くはずの彼女たちの中から、学園を変革しようとする動きが起きて・・・。

 

第四章 一番星

不景気や少子化など暗い空気に包まれた90年代を経て、二十一世紀を迎え凪の空が学園を覆っていた2009年、古い建物の読書クラブの部室内の鍵のかかった引き出しから見つかった年代物の香水がきっかけとなって、学園にロック・バンド「人体模型の夜」が生まれる。ボーカルの山口十五夜はルビーと呼ばれ瞬く間に学園の人気者になるが、それに反するように仲の良かった凛子との間には亀裂が入り始める・・・。

 

第五章 ハピトゥス&プラティー

時代の流れには抗することができず、翌年に系列男子校との合併を控えた2019年、学園は女学校として最後の学園祭を迎えていた。50年前の卒業生妹尾アザミは、大蔵官僚を経て今や保守党議員となってそこに来ていた。学園では、生徒たちが先生に取り上げられたものを秘かに取り返して、一輪のブーゲンビリアの花とともに持ち主のもとに返す「ブーゲンビリアの君」が話題になっていた・・・。

 

これらの物語が、学園では日陰の存在である読書クラブのメンバーによって、読書クラブ誌に綴られたという形態で語られていく。少女ばかりの学園の物語で、彼女たちの一人称は「僕」、そして彼女たちの人気を集めるのは宝塚の男役スターのようなボーイッシュな少女。しかも100年、パリと東京という時空も超えた物語で、しばし不思議な空想の世界に遊ぶことができた。