あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

屋形「朔」の一員になりたい『舞妓さんちのまかないさん』

今楽しみに見ているドラマは『舞妓さんちのまかないさん』だ。漫画が原作でアニメ版もあるらしい。実写ドラマはネットフリックスの制作で、監督が是枝裕和さん、フードコーディネーターは飯島奈美さんとくれば、視聴意欲はいやが上にもあがる。

 

舞妓になるのを夢見て青森から上京する仲良しの少女、野月キヨ(森七菜)と戸来すみれ(出口夏希)の物語。舞の才能を「100年に一人の逸材」と師匠(戸田恵子)に評価されるすみれと、対照的に、いくら叱られても、あまりにも人が良く競争心もないため「舞妓ちゃんには向かへんのでは?」と言われてしまうキヨ。

 

故郷に帰るよう屋形「朔」の女将梓(常盤貴子)に言われてしまうが、キヨはちょうど体を悪くしたまかないさんに代わって、台所を預かることで屋形に残る決心をする。

 

これに先代の女将千代(松坂慶子)、梓の娘涼子(蒔田彩珠)、出戻り芸妓吉乃(松岡茉優)と3人の舞妓たちが朔で寝起きを共にする。売れっ子芸妓の百子(橋本愛)は自分の住まいがあるようだ。

 

まず第一に主演の二人のキャスティングが素晴らしい。すみれ役の出口夏希さんの透明感あふれる清楚な美しさ。そして森七菜さんは、このキヨ役のためにいた女優さんかというくらいぴったりはまっている。野菜に話しかけながら嬉々としてまな板に向かい、挫折した自分と違いどんどん夢に近づいていく友を心から祝福し応援する。

 

女ばかりの暮らしというと、とかく嫉妬ややっかみが渦巻きそうだが、先代の千代といい梓といい、ちょっと天然ぽくてふんわりしているからか、この「朔」にはカラッと気持ちの良い風が吹き渡っている。出戻り芸妓の吉乃も、同期の百子とナンバーワンを競ったと自称しているが、明るくきっぷの良い気性で楽しませてくれる。

 

「朔」はバーも経営していて、そのバーテンダーリリー・フランキー。常連の客として呉服屋七代目の古舘(古舘寛治)・カメラマンの清野(尾美としのり)・建築家の田辺(井浦新)らがいて、昼から夜の「朔」を取り巻く日常のあれこれが描かれる。

 

こまやかな人と人とのかかわりや、背景として描かれる風情ある京の街、さりげなく登場するキヨの愛情のこもった料理。どれをとっても、ほのぼのと心を温めてくれるものばかりだ。

 

主要登場人物の中で、ただひとり陰を感じさせる涼子。彼女に明るさが見えてくることも期待したい。