あとは野となれ山となれ

たいせつなものは目に見えないんだよ

羨ましい『ちょこっと京都に住んでみた』

現在放送されているのは、2019年の年末にスペシャルドラマとして放送された『ちょこっと京都に住んでみた』の続編で、昨年の夏に放送されたものの再放送だと思う(東京では放送されていないようだ)。

 

母親からけがをした伯父の世話をするように言われて京都に滞在した前回の佳奈(木村文乃)は失業中だったが、今回は東京のデザイン事務所に再就職できている。そして1か月の大阪支店出張となり、通勤は少し遠くなるが、京都のおじの家に居候して仕事に通う。その日々を描いている。

 

今回は伯父(近藤正臣)の友人として、バイク店を営む小山(古舘寛治)とグラフィックデザイナーの吉田(玉置怜央)が登場し、佳奈をあちこち案内する。

 

近藤正臣が演じる伯父の暮らしぶりがすこぶる素敵だ。家は京都の町屋。台所は白いカウンタートップとタイルで、モダンに改装されている。到着間もない佳奈に早速伯父が頼んだお使いが、70年くらい続いているお豆腐屋さんのゆばと、400年続く餡こ屋さんのあん、そして100年ものの木桶で仕込む味噌屋さんの味噌を買ってくることだった。

 

佳奈はそれぞれのお店の人に説明を聞きながら買い物を終える。伯父の家に着いて、買って来たあんを最中の皮に好きなだけ入れて、二人でカリッと食べるお茶のシーンはたまらなかった。かつて到来物で食したこの式の最中で、最中ってこんなにおいしいものだったの?!と感激したことを思い出した。その夜には小山と吉田が訪ねてきて酒宴となり、きゅうりに100年木桶の味噌をつけて食べていた。

 

こんな食生活をしていたら食費はいかほどになるだろうと思わないでもないが、それでも3人4人の家族ならいざ知らず、高齢者の一人暮らしならば目玉が飛び出すほどかかるわけもない。こうしたお店が徒歩で買いまわれる距離にある(あったとしたら何という贅沢!)のなら、ぜひこんな暮らしをしてみたいものだと思う。

 

こんな風に、毎回行ってみたくてたまらない気持ちにさせるお店が紹介される。佳奈は3回目に登場した和紙の製品を売るお店のレターセットで、近く結婚する大阪の親友ゆい(徳永えり)に手紙を書き、結婚祝いの品(手作りの網製の素敵なパン焼き器)に添える。

 

エンディングでその手紙を読むゆいの映像が流れ、かつて見た『ツバキ文具店』の多部未華子さんが演じた代書屋さんを思い出した。手紙を出す相手を思って紙を選び、筆記具を決め、文字まで使い分けて書く、素敵な手紙を毎回見ることができた。

 

yonnbaba.hatenablog.comアマ

 

このドラマに登場する小山も吉田も、それぞれ自由で魅力的な生き方をしている。こんなのんきな仕事ぶりで食べていけるのだろうかと心配になるが、どちらも気楽な一人暮らしなので、なんとかなるのだろう。

 

そう、一人で、しかも世俗的な欲のいくつかを放棄すれば、人生は結構気楽なのだ。だから結婚したがらない人が増えることも、少子化がどんどん深刻になることも、ある程度仕方がないように思う。賃金は下がり、社会は不寛容になり、息苦しい世の中なのだから、せめて気楽な一人という人生を選びたくなるのは人情だろう。

 

本気で少子化を、人口減を何とかしようと思うのならば、こうしたことの逆の社会にすれば良いのだ。賃金を上げ、寛容で生きやすい社会を作ればいいのだ。まあ、どう考えてもあの宗教と深くつながった政府には無理なことだろうけれど。

 

 

伯父さんの家