この間ひさしぶりに宮部みゆきさんの『三島屋変調百物語』を読み、なんだか懐かしくて無性に宮部さんの作品を読みたくなった。たぶん一番初めに読んだのは、誰も殺されないミステリーの『我らが隣人の犯罪』だったと思い、リクエストした。
いくら人気の宮部作品といえども、さすがにこの古い作品は順番待ちも何もなくすぐに届いた。そして楽しくてあっという間に読了。
今回手元に来たのは2008年新潮社発行の新装版で、巻末に宮部さんの著作リストが載っていた。この『我らが・・・』がデビュー作と思っていたが、そのリストによると、作品としては『パーフェクト・ブルー』(1989年)や『魔術はささやく』(同年)の方が古いことになっている。
しかしWikipediaによれば、「1987年 - 『我らが隣人の犯罪』で第26回オール讀物推理小説新人賞受賞」となっているので、やはりこちらの方が古いのか?どちらにしても、『パーフェクト・・・』も『魔術・・・』も両作品ともとても感動した記憶はあるのだけれど、あまり内容は覚えていない。また読み返してみてもいいなと思う。
著作リストを眺めて、あらためて宮部さんの作品はかなり読んでいることを再確認した。2008年発行の本ゆえ掲載されているのは当然2007年までの作品で、たぶんこの後の作品になると既読のものがぐっと減るように思う。それは宮部さんの作品がつまらなくなったということではなく、私の興味がほかに広がったためだ。
さて『我らが隣人の犯罪』。両親が苦労してなんとか中古のタウンハウス(作中の人物曰く「西洋棟割長屋」)を買ったはいいけれど、隣家のスピッツの鳴き声のうるさいことうるさいこと。中学1年生の三田村誠も病弱な妹の智子も両親も、心身ともに参ってしまっている。
そこに現れた母さんの一番下の弟である叔父さんは、素晴らしいことを思いつく。こうしてその叔父さん発案の「犯罪」を叔父さんと誠と智子の3人は着々と実行していく。
問題は解決し、きちんと悪は裁かれ、犬も人も誰も傷つかず、WIN-WIN-WINの実に爽快で、そしてミステリーとしても十分楽しめるものになっている。時代背景が1980年代とあっていささか事情が変わってしまっている部分はあるものの、いまだ古さは感じさせない。いや、多くの読者は子供たちの言葉遣いが現実的ではないと感じるかもしれないが、私にはむしろそれも心地よかった。
このほかに「この子誰の子」「サボテンの花」「祝・殺人」「気分は自殺志願(スーサイド)」が収められているが、どれも楽しくさわやかな作品だ。