古い建物と言えば、ここにも頑張ってもらいたい。
弘前三上ビル。
大正15年に、弘前無尽株式会社(後に弘前相互銀行)が自社専用ビルとして建設したもの。弘前市で二番目に造られた鉄筋コンクリート建造物で、設計は青森工業学校長の大竹巽。角地の隅を切り垂直性を強調した壁面を立ち上げ、3階窓上部にあしらった歯飾状装飾を背面にまで連続させるなどアールデコ調の意匠に特色がある(弘前市の紹介サイトを参考)。
そうして必要な買い物をできるだけ素早く済ませ、そのあとでこの喫茶店で大好きなコーヒーを楽しむのが、その頃の私の大切な癒しの時間だった。でも時には「コーヒー研修で上京するため臨時休業します」という表示が出ている日に当たって、がっかりすることもあった。クルクルパーマの物静かな髭のマスター。今もあの方がなさっているのだろうか。
これはネット上からお借りした現在の葡瑠満さんの様子。当時は今より小規模ながら同じような雰囲気だった。注文すると、コーヒーの種類や客に合わせて、マスターが後ろの棚にズラッと並んだカップから選んでサービスされた。どんなカップでくるかも楽しみの一つだった。
色々な仕事を経て公文の教室を開き、それが軌道に乗って生徒が増え、比例するように夫の放蕩が激しくなり私が一家の稼ぎ頭になると、弘前に出かけるのにもそれほど気を使わなくてもよくなったが、猛烈な忙しさで、この喫茶店を訪れることも少なくなって行ったように思う。
現在の葡瑠満さんは独立店舗で営業しているようだが、私の心にあるのはやはりこの三上ビルのお店で、このビルもずっと残っていてほしいものだと思う。