本作は世の中がコロナで大騒ぎになる前から撮り始めていて、途中で緊急事態宣言が出されて撮影も中断に追い込まれるという大変な事態を味わう作品となったようだ。5年で世は様変わり。そんな騒ぎを遠い昔のように感じながら、全9話を楽しんだ。
主人公は表参道に探偵事務所を構える明智五郎。大変な美食家だ。明晰な頭脳でどんな難事件も解決することはするのだが、いつも解決は一呼吸遅れていて、犠牲者が出てしまってから、しかも犯人はつねにまんまと逃げおおせてしまっていて、名探偵なのかどうかわからない状態なのだが、中村倫也の雰囲気で名探偵と思わせられてしまう。
これもコミック原作ということで、登場人物がみな少々現実離れして「キャラがたって」いる。その濃い人物をピッタリの役者たちがうまく演じて楽しませてくれる。特に、今年は大河ドラマで妖艶な花魁を見事に演じた小芝風花さんが、ワゴン販売の弁当屋でありながらいつの間にか明智の助手小林1号をさせられてしまう小林苺を、実に可憐に演じている。
それから明智に夫の不倫の相談に訪れた地味な主婦が、明智のアドバイスがきっかけになって眠っていた自分に目覚め、「マグダラのマリア」となって次々に周囲の人間を殺人鬼にしていく役を演じる小池栄子が美しく怖ろしく見事。
主演の中村倫也さんはいまさら言うまでもなくカメレオン俳優として名を馳せているが、回想シーンで高校生として登場した中村さんはまさに十代の澄んだ目をしていて驚かされた。『十年先も君に恋して』の時の内野聖陽さんを思い出した。
この他、刑事上遠野役の北村有起哉さんは言わずも・・・だし、明智が好きでたまらない上遠野の部下のキャリア刑事を演じる佐藤寛太さんもコミカルな演技がかわいい。犯罪の描写にはちょっと残酷な部分もあって、ホラーとコミカルのトッピングをそえたミステリーもの、だろうか。
