著者は垣谷美雨さん。知らない作家さんだったが、映画『老後の資金がありません』の原作者で、ほかにもドラマ化された作品なども複数ある方だった。
近頃しばしば目にし耳にする「墓じまい」。一人の母親の四十九日法要が近づいたところから、その息子や娘そして配偶者や子を巻き込んでさまざまな思いが巻き起こる。それを当事者一人ひとりの視点から描いていく。
現代人の生き方にすっかり合わなくなっているお墓。たまたま地元に残っていて、ついつい世話をしてしまう、するべきだと思ってしまう(たいていの場合「嫁」と呼ばれる立場の人)人にずっしりと重荷がのしかかる。
ここに出てくるその立場の人は長男ではなく次男の嫁で、地元のならいにしたがって一年中墓の花を切らさないよう世話をするが、分家ゆえ自分たちはその墓に入れず新たに調達しなければならない。東京で暮らす長男は、そんな次男の嫁の苦労など想像だにしない。
そしてその四十九日を迎える亡くなった母親が、「樹木葬にしてくれ、決して夫と同じ墓に入れてくれるな」という遺言を残していたと娘が言い出したことで、話はますます難しくなっていく。
60年ものあいだ不平も言わずおとなしく連れ添っていた妻の思いがけない遺言に、夫は怒り心頭だ。「誰のおかげで飯が食えていたと思っている!」というお決まりのような文句。男と女の間には・・・である。
墓問題からあらわになって来る年代や男女による価値観の違い。はては選択的夫婦別姓問題に及び、反対派を代表するような元国会議員という「オジイサン」の講演会では、見事に聴衆の女性たちがやりこめて溜飲が下がる。
男性の視点も女性の視点も出てくるが、総じて女性の意見のほうが時代をとらえ未来を見ている気がするのは、私が同じ女性だからということばかりではないように思う。軽やかで姓についても柔軟な若い世代の男性も登場し、また最期の方で2026年国会でついにこの法案が通るとなっていて、ぜひこれが現実になってほしいものだと願う。実際の政治はどんどん時代を逆行しているようだけれど・・・。

表紙に描かれている、元メガバンクの総合職だったという女性住職は、なかなか魅力的なキャラクター。