あとは野となれ山となれ

たいせつなものは目に見えないんだよ

豊かな時間『楽園のカンヴァス』原田マハ著

もう1年半ほども前にcangaelさん(id:cangael)のブログで拝見して、興味を持ってチェックしていた本作を、4月に生涯学習センターにリクエストしたのは偶然だった。

 

ちょうど今、楽しみに見ているドラマ『まぐだら屋のマリア』の原作を書いている著者の作品だ。以前ブログに感想を書いて以来、多分この方の作品は二作目だと思う。前作は物語はどれも素晴らしかったのに、言葉の選択にいささか抵抗を感じたようだが、今回の作品では全くそのようなことはなかった。

 

hikikomoriobaba.hatenadiary.com

 

伝統的な美術教育を受けず日曜画家として制作を始めたアンリ・ルソーは、素朴派などと呼ばれ下手な画家として長く不遇な扱いを受けた。そのルソーの研究者である日本人のオリエ・ハヤカワとアメリカでMoMAのアシスタントキュレーターをしているティム・ブラウンの二人に、知られざるルソーの遺作「夢をみた」を持っているというコレクターから真贋を見極めてほしいという依頼が入るところから物語が動き出す。

 

依頼された作品は果たして本物なのかどうか、また美しく魅力的なオリエに明らかに惹かれていくティムの思いの行方、そして作品の真贋の判断材料にと与えられた古書に記されているルソーと、彼の絵のモデルとなった女性ヤドヴィガとその夫の物語など非常に興味深い。

 

ルソーと同時代に生きたピカソや詩人アポリネールなども登場し、19世紀から20世紀初頭の時代と、オリエやティムの生きる20世紀後半、そして17年の時を経て二人が再会することになる2000年という3つの時代の物語がみごとに綴られていく。

 

永遠の絵画を生み出した人やそれを支えた人の素朴な魂と、芸術を取り巻く欲得にまみれた人々の心、それに絵画と人にまつわるミステリ要素も加わって非常に面白く味わい深い読書だった。