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市原悦子さんに心つかまれる映画『しゃぼん玉』

当地では4日の深夜と言うか、5日の未明に放送になった映画『しゃぼん玉』を、昨夜鑑賞した。どんな作品かも知らないまま期待もせず録画したのだけれど、これが心にしみる大変良い作品だった。

 

伊豆見(林遣都)は恵まれない生い立ちからすさんだ生活をし、女性や老人からひったくりをして暮らすうち、とうとう相手をナイフで刺してしまう。ヒッチハイクしたトラックにも放り出され、山中の道で倒れているバイクを見つけた彼はそれに乗って逃げようとするが、脇の茂みの中から老女(市原悦子)の声で呼び止められる。

 

足を怪我した老女スマは、伊豆見の力を借りて自宅に戻る。素性も分からない彼を彼女は「坊(ぼう)」と呼び、近隣のものには孫だと言ってともに暮らし始める。

 

隙を見て金を盗み逃げる算段をしていた伊豆見だが、その機会もないまま、毎日昼間でもパジャマでダラダラと暮らす日々を続ける。そのうちシゲ爺(綿引勝彦)と呼ばれる男の山仕事を手伝わされるようになる。シゲ爺は厳しいが、その奥に優しさを感じさせ、伊豆見はぼやきながらも山仕事に精を出す。

 

その山仕事に賃金はなく、収穫物を「平家まつり」で売って儲けよとシゲ爺は言う。祭りが近づいていて、集落の人々はその準備にそれぞれ忙しかった。手が足りないからと、山仕事を休んで祭り会場の花を植える仕事に回された伊豆見は、そこで都会から戻って間もない若い女性美知(藤井美菜)と知り合い、充電が切れたままになっていた携帯を取り出し、連絡を取り合うようになる。

 

山中で自分のバイクに乗ろうとした伊豆見を見ているはずなのに、何の詮索もせず、命の恩人だと感謝し、「坊はええこじゃ、坊はええこじゃ」と頭をなで受け入れるスマの温かさに、観ている者まで包み込まれるような気がする。

 

伊豆見の母親は男と逃げ、そのあと父親も彼の弟だけを連れて女性と家を出てしまったと言う。そんな彼のかさかさの心を、スマの優しさが包み込み、おおらかで優しい山里の暮らしが癒していく。

 

そんな中、村の人から、美知は暮らしていた都会で、ナイフで刺されバッグを奪われるという通り魔にあって傷つき、故郷に戻って来たのだと知らされる。伊豆見は自分の犯した罪の深さに初めて気づいておののき、重大な決心をする・・・。

 

 

なんと言っても、白眉は市原悦子さんのスマである。シゲ爺の車に乗った伊豆見と彼女の別れのシーンは深く胸を打つ。

 

そして、モデルは宮崎県の椎葉村のようだが、のどかな山里や平家まつりが物語を盛り上げ、ラストの美しいシーンは深く心に残る。

 

原作は乃南アサさんの同名小説だそうで、これも読んでみたくなる。そして、いぶし銀の魅力のスマ・市原さんも、シゲ爺・綿引さんも、今はともにいらっしゃらないということがたまらなく寂しい。

 

 

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