あとは野となれ山となれ

たいせつなものは目に見えないんだよ

私ならどんなお告げをもらうかな『猫のお告げは樹の下で』青山美智子著

「このたび、2LDKの中古マンション購入。近くなったから遊びにおいで」と時子叔母さんからハガキが届いた。「私」はケチでしゃれっ気もない時子叔母さんが苦手で、どうせ社交辞令だろうし遊びに行く気などなかった、ハガキのお城のイラストに添えられた「こだわりの西向き!」という文字が目に入る前までは。

 

なぜその文字に目を引かれてしまったのかと言えば、その少し前に見つけた小さな神社で、不思議な猫ミクジから「ニシムキ」と刻まれた葉っぱをもらっていたからだ。その神社の宮司さんの話では、ミクジからお告げの葉っぱをもらえるのは幸運なことらしい。「ニシムキ」って何なのだろうと思っていたところだったので、つい叔母さんのマンションに行ってみる気になった。

 

そうして訪れた時子叔母さんのマンションで、美容師の「私」ミハルは頼まれて叔母の髪を切りながら、今まで自分が見ていたのとはまるで違う叔母の姿を見つけ、そして「こだわりの西向き」の意味も知る。これが『[一枚目]ニシムキ』のお話。

 

『お探し物は図書室まで』や『木曜日にはココアを』の青山美智子さんの作品だ。表紙は、いつもの田中達也さんのミチュアを使った優しい雰囲気で、今作も読む人の心を優しく温かく包み込んでくれる作品ばかりだった。

 

ある神社の境内にそびえるタラヨウの樹。時折りそこに不思議な猫ミクジが現れ、タラヨウの周りをバターになってしまうんじゃないかと心配になる調子でグルグル回り、止まって幹にトンッと左前足を突くとハラリと葉っぱが1枚落ちる。

 

ある人はそこに「ニシムキ」と刻まれたのを、ある人は「チケット」を、またある人は「ポイント」と刻まれたのを目にする。

 

『[五枚目]マンナカ』には、marcoさんも書いていらっしゃるが、『お探し物・・・』のあの人が登場する。選択的夫婦別姓制度のない日本のこととて、姓は違っているのだけれど・・・。

 

特別に、外から何かの力が働いたりするわけではない。ただミクジから言葉の刻まれていると思われる葉っぱをもらい、宮司さんの言葉をヒントに、悩むその人自身が物事や人の見方を変えていく。それによって周囲の人との関係や自分の物事との取り組み方が変わっていく。

 

心の狭い私は、しばしば人や物事のある一面を自分の勝手な色眼鏡を通して見てそして結論付けてしまう。この作品を読んで、そうだ違う角度から見たら、あるいは違う意識を持って見たら、きっと全然違ったところにたどりつくのだろうなと痛感した。なんとか広い心でものごとに対したいとは思うのだけれど・・・。寛容は私の残りの人生の一番の課題だ。

 

先月リクエストしていたもの。