あとは野となれ山となれ

こどもや動物、みんなが安心して暮らせる世界でありますように・・・

本・動画感想

大型犬の誘惑『シャルロットの憂鬱』近藤史恵著

今週は見守り当番。先ほど、プール道具の大きなバッグをぶら下げ、のんびりのんびり歩く1年生らしい最後の児童を見送って家に戻り、つい、冷凍庫のハーゲンダッツをご褒美に食べてしまった。私は夏でもあまり冷たいものは飲みも食べもしないのだけれど・・・。…

頑固爺さんの心をとかしたものは『幸せなひとりぼっち』

とりあえずという感じで録画しておいた、深夜の映画『幸せなひとりぼっち』を観た。内容は知らず、題名とスウェーデン映画という所に惹かれただけだったが、これが大変な掘り出し物だった。 主人公は、半年ほど前に最愛の妻ソーニャに先立たれた59歳のオーヴ…

罪は罪なのだけれど・・・『祈りの幕が下りる時』東野圭吾著

東野圭吾さんの加賀恭一郎シリーズ10作目の作品で、ずっと謎だった彼の母親が家を出た理由もついに明らかになり、加賀が日本橋署に移った理由など、今回の事件とともに、これまでのさまざまな疑問が解明される。 読んでいる途中でなんだか覚えのある部分があ…

浮世絵から紡いだ物語『しのぶ恋』諸田玲子著

表紙カバーに7つの浮世絵。安藤広重「目黒太鼓橋夕陽の岡」、歌川国政「五代目市川團十郎の暫」、歌川国貞「集女八景 粛湘夜雨」、鈴木晴信「縁先物語」、葛飾北斎「百物語 さらやしき」、喜多川歌麿「深く忍恋」、東洲斎写楽「二世市川高麗蔵の亀屋忠兵衛…

端正な物語を堪能、ドラマ『アキラとあきら』

元々はWOWOWの作品のようだけれど、私はネットフリックスで視聴。これほどまでに正統派の端正な経済ドラマを久々に観た。 池井戸潤さんお得意の銀行を舞台とした物語。けれども大ヒットした『半沢直樹』のような、クセの強い人物も、デフォルメされた悪役も…

疎外と受容を思う『ガラスの海を渡る舟』寺地はるな著

コロナ禍中の2021年の序章から始まり、2011年の第1章から2021年の終章まで、10年間の兄妹の物語が、兄と妹交互の視点で語られる。 兄妹の父は他の女性のもとに去り、母親は料理の仕事で売れっ子になり不在がち。そんな中、二人はガラス工芸家の祖父の手で育…

想像を絶するものとの壮大な物語『空の中』有川浩著

久々の有川さんの作品。けれどもこれは、著者のデビュー作で電撃ゲーム小説大賞を受賞した『塩の街』の次の作品で初期のものだ。よって、著者名は有川浩(現在は有川ひろ)。 近未来が舞台で、年号は200X年と記されている。今となっては過去の年号になってし…

良い物語と美味しいもの、原田ひ香著『古本食堂』は最強だ

またしても素晴らしい本に出合ってしまった。これだから読書はやめられない!と感じさせてくれた。著者はこんなに印象的な名前で、2007年にすばる文学賞を受賞後すでに著作も随分出ているようなのに、全く知らなかった。本作は今年の3月に出版(初出は昨年…

また山に登りたくなる『春を背負って』笹本稜平著

この著者のことを、警察官や探偵が主人公のミステリーを得意とする作家だと思っていたが、結構スケールの大きな冒険ものも書いているようで、本作品は、冒険まではいかないが、その範疇に入る作品だ。2014年に松山ケンイチ主演で映画化もされているらしい。 …

江戸の女性たちの様々な生き方『春告鳥』杉本章子著

初めての著者。1953年生まれで私より2歳年下なのに、7年前に62歳で亡くなっている。せっかく良い作品を書く作家さんを知ったと嬉しく思ったのに、もう新しい作品は生まれないと思うと残念だ。 江戸時代に実際に売られていたという占いの本『女用知恵鑑宝織…

本からつながる愛『配達あかずきん』大崎梢著

先日読んだ『サイン会はいかが?』が良かったので、同シリーズの最初の作品である本作をリクエストしておいた。届いたという連絡が市民館からあり、早速受け取り、そして読了した。 駅ビル6階に位置する成風堂書店を舞台に、正社員の木下杏子と法学部学生で…

家の中でもマスク、と戦争映画のこと

少し前からヒノキの花粉が飛び始めたことを感じてはいたが、今日は私としてはいささか症状がひどく、目のかゆみの他に、くしゃみが連続して出てしまう。 で、家の中だというのにマスクをしている。 可愛いマスク猫ちゃんみっけ! (MONOTONEさんのサイトから…

素敵な街の本屋さん『サイン会はいかが?』大崎梢著

図書館を舞台にした小説にはつい手が伸びる(ただ、前回読んだ作品『ツクツク図書館』は私には残念だったけれど)。そして、図書館と同じように、本屋さんを舞台にした物語と言えば、『ビブリア古書堂』を上げるまでもないくらい、本が好きな人間には訴求力…

『漱石先生大いに悩む』清水義範著

くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨の降る 窓外を眺めているうち、なんとなくこの歌が浮かんだ。まだバラは蕾を持つどころではないので、子規がこの歌を詠んだのは、もう少し季節が進んだ頃合いだろうけれど。 雨が多くなった。ひと雨ごとに…

『即興詩人』の116-3-17は「錶」

判じ物のような今日のタイトルは、暗号である。今読んでいる、北村薫さんのベッキーさんシリーズ最初の作品である『街の灯』にこの暗号が登場し、ドラマ『ミステリと言う勿れ』で門脇麦さん演じるライカの使う暗号と同じだと、思わずニンマリしてしまった。 …

素敵な夏の日の冒険『サマーバケーションEP』古川日出男著

ちょっと癖のある文体で書かれているので、これに馴染めるかがこの本を読み進めるかどうかを分けるだろう。私も読み始めてしばらくすると文体にあてられたような気分になってしまい、本を置いた。先が知りたいからと言って、一度にあまりたくさん読まず、ゆ…

弱いヒトの強い生き方『黛家の兄弟』砂原浩太朗著

黛家は、北国の支藩とは言え、神山藩の筆頭家老を代々務める家柄で、三千石の大身である。その黛家の栄之丞・壮十郎・新三郎の三兄弟の物語で、三男坊新三郎の十七歳から、十三年後までを描く。 私が15年暮らした津軽の弘前城を思わせるような桜堤で物語は始…

豪胆さと繊細さと

昨夜ネットフリックスで映画『引っ越し大名!』を見た。 引っ越し奉行を押し付けられる、おくてで本の虫の主人公片桐春之介は星野源さんだ。星野さんはもちろんはまり役で文句なしに素晴らしいが、すべての点で正反対の人物、幼馴染の鷹村源右衛門を演じた高…

乙女の探求と浪漫『鷺と雪』北村薫著

市民館の図書室に未読の北村薫さんの作品を見つければ、どうしたって借りてしまう。先日、『鷺と雪』を見つけ、いそいそと借りてきた。 時は昭和初期。まだ伯爵だの子爵だのといった階級が存在した時代の物語だ。主人公はそうした華族や皇族の学友を持つ良家…

それぞれの中の少年を呼び起こす『小学五年生』重松清著

「それぞれの中の少年を呼び起こす」と書いたが、世の中には、この人は自分が子供だったことなど絶対にきれいさっぱり忘れているな、と思わせる人もいる。そういう人には、きっとさすがの重松氏のこの名作も響かないだろう(永田町あたりにはザクザクいそう…

出合えて良かった!『西荻窪三ツ星洋酒堂』

ネットフリックスのトップ画面に表示され、なんとなく気を惹かれて再生ボタンをクリックしたら、気持ちのあったかくなる素敵なドラマに出合えた。 以前、原田知世さん主演のドラマ『スナックキズツキ』を紹介したが、あのドラマの舞台の喫茶店をバーにしたよ…

名作になりそうだった『月への梯子』樋口有介著

6室のアパート「幸福荘」の大家福田幸男は、40歳であるが、小学校の低学年くらいの学力しかない。近所で総菜屋を営む幼馴染の京子とその母親だけは昔ながらの「サッちゃん」と呼ぶが、その他の人々には「ボクさん」と呼ばれている。 幸福荘は20年ほど前に幸…

ひたひたと心を満たす『きみのためのバラ』池澤夏樹著

勘違いから、乗るはずの便を逃し空港で戸惑う男の物語に始まって、世界各地を舞台にした物語を集めた池澤さんの短編集。出不精でいまだ自分の国を一歩も出たことのない私でも、寒中の日本に居ながらにして、南の島に行ったり、ここ以上に寒々とした北欧の空…

昔むかしの「月9」を見る

録画したいドラマがかち合っていったんは諦めたドリフのドラマだったが、marcoさん(id:garadanikki)の感想を読んでやはり見たかったなと思った。コメントにそんなことを書いたところ、FODを利用して見ることを教えていただき、早速登録して視聴した。 そして…

二度目でもワクワク『dele』

3年前に毎週楽しみに見たドラマ『dele』が、今ネットフリックスで見られる。キャストもストーリーも素晴らしかったのだが、深夜帯でもあったからか、あまり話題にはならなかった(だが、のちにギャラクシー賞はじめ数々の受賞あり)。続編かスペシャルでま…

筋を通す男のカッコよさ!映画『浅草キッド』

柳楽優弥くんの熱演はもちろんだけれど、大泉洋さん演じる「師匠」が、なんとも粋で男らしくて、でもシャイで可愛らしくて、たまらなかった。 ビートたけしさんのブラックなユーモアも暴力的な映画もあまり得意ではなく、無名時代、浅草のストリップ劇場に出…

最も惹かれた人『光の指で触れよ』再び・・・

昨日あれだけ書いたのに、実は最も心惹かれた人物に触れていなかった。ユニコーニアの近くで、コミュニティには属さず一人で自給自足に近い暮らしをしているトーマスという人だ。 ある日、アユミはキノコとその友達であるオリヴィアを連れてユニコーニアの近…

求めていたものに出合った『光の指で触れよ』池澤夏樹著

ああ、私はこれを求めていたのだ!と思った。漠然と指向していたものが、はっきりと形をとってこの物語の中にあった。何十年か若い日に読んだら、きっと生き方を左右されたことだろう。 物語の中心となるのは「ぼく」の友人の天野家。大きな会社で、風力発電…

心地よい感動の青春物語『虹色の皿』拓未司著

王道の青春物語といえる作品だけれど、その王道ぶりが爽やかで気持ちよくさえ感じた。 主人公小西比呂は岐阜の高校を出て大阪の調理師専門学校に進み、卒業後は神戸のフレンチレストラン「シェ・ホンマ」に就職する。そこはフレンチを目指す料理人なら誰もが…

昔話と絡めた女性の半生『瓜子姫の艶文』坂東眞砂子著

伊勢松坂の遊女屋の伽羅丸は、間(あい)の山で拾われたみなしごだ。かすかにおっ母さんと暮らしていた頃の記憶があるが、切れ切れでおぼろ、今は木綿問屋の主亥右衛門(いえもん)の表の妻になることを夢見ている。 この遊女伽羅丸と亥右衛門の妻りくと、交…