今日は5月13日金曜日。でもホラーの話ではない。そもそも、怪我や痛みの話に弱い私は、ホラーが苦手だ。
13日の金曜日は別に珍しくもなく、計算上では1年に1.7回ほどになり、年に1、2回で何年かに1度は3回という年もあるそうだ。ちなみに今年はこの5月13日だけとか。
それで、13日の金曜日で私が思い出したのは、青森市にあった「だびよん劇場」というライブハウスで、伊奈かっぺいさんが行っていた「13日の金曜日」というタイトルのライブだ。(注:「だびよん」というのは「~だろう」という意味の津軽弁。フランス語の響きに似ていることもあって、オーナーがシャレで命名したとか)
調べて見たら、なんと今年、本日も行うという情報があった。
”まだ生きてます”というコピーもかっぺいさんらしい。ライブハウス「だびよん劇場」は閉鎖されてしまったので、さすがに会場は別な場所になっている。
伊奈かっぺいさんと言っても、ご存じない方も多いかもしれない。弘前市出身で、地元の放送局のサラリーマンをしながら、詩人・イラストレーター・シンガーソングライターなどとしても活躍する、青森では超の付く有名人。一時期は和田アキ子さんと全国ネットの冠番組(かっぺい&アッコのおかしな二人)を持ったこともあった。
青森と言えば、本州の北の果て、雪に閉ざされる長い冬という暗いイメージを持っていた私は、このかっぺいさんのユーモアあふれる独特の津軽弁の詩にびっくりしたが、そこに暮らし、地元の人々と親しくなるほどに、かっぺいさんが特別なのではなく、津軽の人たちが総じてユーモアのセンスがあることを知った。
また津軽弁というものが独特で、言葉遊びに適していることも大きいかもしれない。かっぺいさんの面白さも、全国の人に津軽弁をマスターしてもらわないと十分わかってもらえないだろうから、それがとても残念だ。
独特な津軽弁の面白さのご紹介のため、かっぺいさんの戯曲『無口な二人』を掲載させてもらうことにする。左端の女とか男は登場人物、真ん中のひらがな一文字はセリフ、カッコ内は状況の説明だ。
女 の (呼びかけ)
男 … (気付かない)
女 の (もう一度)
男 ん (呼ばれた気)
女 の (繰り返し)
男 わ (私の事か?)
女 な (汝の事よ)
男 あ (なんだい?)
女 さ (恥ずかしそ)
男 ん (なんだよ)
女 い (恥ずかし…)
男 ん (なんなんだ)
女 い (別に…)
男 ふ (わからんな)
女 の (再び呼ぶ)
男 あ (なんだよ)
女 く (食べる?)
何やら食べ物らしき物を差し出す。
女 く (再び問う)
男 ん (気の無い…)
女 の (どっちなの)
男 く (食べるよ)
女 て (手を出して)
男 て (オーム返し)
女 て (そうです手)
男 ん (手を出す)
女 か (ハイどうぞ)
男 ん (受け取る)
女 け (食べなさい)
男 く (食べますよ)
女 め (美味しいか)
男 め (美味しいよ)
女 ん (良かった)
男と女ほほえましく寄り添う。静かに幕。
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