あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

1000キロ余をはだしで歩く子供たち『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』

気に入ったドラマは時に2話分続けて見たりするくせに、なぜか2時間前後の映画となると、なかなか見る決心のつかない妙な私だ。それで、ネットフリックスのマイリストにもいっぱい映画が入れてあるのに、なかなか減らない。

 

集中力の低下と言うより、「2時間集中を求められるということ」の重みが増したと言ったらいいだろうか。気分としては、30分ものを何本も見るのが一番気楽で良い。民放の1時間ドラマも、CMを抜いて見れば46分程度なので、これもちょうどいい塩梅。実際の時間の長さではなく、気分的なものだ。

 

そんなことで、何日も保留にしていたのだが、先日の友人が持って来てくれた映画をやっと鑑賞した。『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』。スーダンからの難民たちと、彼らに職業を紹介するのが仕事のアメリカ人女性の物語だ。

 

1983年アフリカ大陸のスーダンで内戦が始まり、10万人以上の子どもたちが親や家を奪われた。10数年後、「ロストボーイズ」と呼ばれた彼らを全米各地へ移住させるという、実際におこなわれた計画を元にした物語。

 

スーダンから到着した難民のマメールたち兄弟を、空港まで迎えに行くキャリー。3人の他にもう1人姉がいたのだが、女性は一般家庭が受け入れるというアメリカの決まりのため、強いきずなの家族も引き離されてしまう。

 

カンザスシティーの職業紹介所で働くキャリーに与えられた任務は、彼らの就職の斡旋だった。電話をかけても、「警報だ」と言って受話器を取ろうともしないため連絡が取れず、マクドナルドもピザも知らない彼らに最初はイラつくキャリーだったが、彼らの成長を見守るうち、次第に友情が芽生え、彼女の生き方さえも変わっていく・・・。

 

内戦下で、命からがら安全な場所を求めて逃げる子供たちの姿に胸を締め付けられる。まさに、人間は生まれる時代も場所も選べない。このはだしで逃げる子供は、私だったかもしれないのだ。

 

スーダンから逃げ出す途中で、弟たちの犠牲になった兄への思い。アフリカでの生活とあまりに違うカンザスシティーでの暮らし。職場で味わうカルチャーショックや誘惑。スーダンを思えば別天地のように安全で豊かな暮らしなのだが、なぜか彼らがあまり幸せそうには見えない。そんな彼らとは対照的に、かさついていたキャリーの生活は思いがけない方向へ変化していく。

 

この物語は事実をもとに作られているので、実際に何千人ものスーダン難民をアメリカは受け入れたのだろう。マメールたちがアメリカに到着してからも、住む場所や仕事の斡旋など生活になじむための助けもきちんと講じられていて、アメリカの懐の深さを感じる。

 

また、彼らが心の問題で悩んでいる時、キャリーの友人で牧場を営む男性が話の聞き役になっていたが、兵役の経験があるということで、彼らのスーダンでの体験にうまく寄り添うことができていた。

 

兵役の経験があるなんて決して望ましいことではないが、死と隣り合わせの世界にいた彼らに本当に寄り添えるのは、やはりこうした厳しい体験をした人でなければ難しいのかも知れないと思った。

 

「グッド・ライ」の意味がラストになって分かりジーンと来る。