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たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

誰が悪者か『ナイチンゲールとばら』オスカー・ワイルド著

オスカー・ワイルドの有名な短編『ナイチンゲールとばら』。私の大好きな「ちくま文学の森」ではなぜか第8巻「悪いやつの物語」に収録されている。

 

ご存じの方も多いと思うが、あらすじは

 

青年はある女性に恋をしている。その女性から真っ赤なばらを持ってきたら、あなたの愛を受け入れると言われるのだが、彼のまわりには赤いばらなどはなく、絶望している。

その青年に恋しているナイチンゲール(西洋のウグイスとも言われる鳴き声の美しい鳥)は、赤いばらを求めて街中をたずねまわる。そしてある木から、青年の住まいの窓の下にあるばらの木の刺に心臓を突き刺せば、赤いばらを咲かせることができると教えられ、迷うことなく刺に自らの心臓を押しあてた。

夜明けとともに青年が窓を開けると、庭に一輪の真っ赤なばらが咲いている。それを手に取って嬉々として好きな女性のところに行くが、そんなもので私の気持ちを得られるわけがないと、にべもなく断られてしまう。がっかりした青年は、ばらを道端に投げ捨ててしまう。

 

というものだ。ごく普通に考えれば、ナイチンゲールの青年への献身的な愛あたりに焦点を当てて、「美しい話」などに収められそうなものだけれど、ここで「悪いやつの物語」に入れるところが、「ちくま文学の森」らしいのかも知れないと思う。

 

さて、「悪いやつ」は青年か、それともばらよりも宝石を取った女性なのか・・・。

 

 

ウェブ上でやっと見つけた美しい表紙。でもどこの本か分からない。古い作品でありしかも短編のため、単独の本はないようだ。