あとは野となれ山となれ

たいせつなものは目に見えないんだよ

素晴らしかった『あの子の子ども』

カンテレ制作でフジテレビ系列で放送されていた『あの子の子ども』の最終回を観た。16歳の高校生が妊娠してしまうという話だが、その相手である男子高校生宝(細田佳央太)始め、登場するすべての人が誠意があり真剣で、非常に考えさせられる良質なドラマだった。

 

未成年の妊娠というととかく興味本位に描かれがちだけれど、この作品は原作漫画の作者が対象読者層の高校生など若い人に「自分と相手の体と将来をきちんと考え、正しい知識とコミュニケーションを持って行動してほしい」との願いで描いたと言っているとおり、説教調に傾きすぎるのでも、若者に迎合しすぎるでもなく、非常にバランスの取れた内容になっていた。

 

それだけに、登場人物が理想的すぎると言われそうなきらいはあるが、でもフィクションなんだから、私は理想でいいではないかと思っている。

 

とりわけ妊娠した福(さち:桜田ひより)の考えを尊重し励ます、「GTOになりたかった」と言う担任教師(橋本淳)が素晴らしかった。娘の妊娠を知って当初逆上した父親(野間口徹)も、最終回は野間口さんの力もあってチャーミングだったし、カップルの双方の母親が、それぞれを讃えるように交わす会話も素敵だった。

 

高校生の性をいけないことのように封じ込めるのではなく、既に存在するものとして、その上で避妊に失敗するとどんな事態が起きるのかを考えさせた。

 

宝は陸上長距離の素質があり、大学の駅伝に出場するのを夢見ていたが、16歳で父親になる決心をしその夢を諦めることになる。福にとっても、宝がその夢を叶えるのは大切な夢だったが、一つの失敗が次のほつれを呼び・・・と二人の運命を大きく変えていく。

 

考えて考えて若い二人が出した結論は、周囲の大人たちにも支えられて、きっと諦めた以上の夢や喜びをもたらしてくれることだろうと信じたい。