今から60年近くも昔、森繁久彌さんが主人公の祖父を演じた『七人の孫』という人気ドラマ(TBS系列「ナショナル劇場」)があった。主だった出演者の多くがすでに鬼籍に入ってしまわれた。
森繁さん演じるお祖父さんは七人もの孫に囲まれて、賑やかな大家族で幸せだなあと思って見ていたが、当時は40代だった我が母も、考えてみればちょうど七人の孫を持つ祖母となったのだった。
10年前に、そんな母と七人目の孫のことをブログに書いていた。
9人兄弟姉妹の末っ子の母の、その末っ子である私にはほとんど祖父母の記憶がない(父は一人っ子だったけれど、母親が若くして結核で亡くなり、その後父親が若い後妻をもらったことで親戚とごたごたがあって付き合いが途切れてしまったので、私は父方の祖父も親戚も知らない)。
夫の故郷にUターンすることになり、ならば子供たちに濃い親戚関係を経験させられるかも・・・と思ったが、堅苦しい家風の家に気楽に出入りする親戚は少なく、現実は考えたようにはいかなかった。
私の父は周囲から「きっと長生きだろう」と言われていたにもかかわらず、70にもならずに逝ってしまったので子供たちの記憶にあまり残ってはいないようだが、その分幸か不幸か私が途中で故郷に戻ることになって、私の母とは思いがけなく交流が増えた。
専業主婦を目指し、3人以上でなければ「複数の」兄弟とは言えないなどと言っていた私だが、結局子供は2人しか持てず、次男が保育園に行けるようになるやいなや働かざるを得なくなってしまった。
若いときに思い描いた理想の生き方とは程遠いけれど、それでも今振り返れば、思いがけない経験ができて面白い人生だったと思える。そしてまだまだ私の人生は続くわけで、これからも悔いのない日々を紡いでいきたいものだと思う。