今月の「100分de名著」はフランスの学者ル・ボン著の『群衆心理』。
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18世紀後半から19世紀、圧倒的な多数を占め始めた群衆が社会の中心へと躍り出て支配権をふるうようになったとル・ボンは分析し、彼らを動かす「群衆心理」が猛威を振るい続ければ、私たちの文明の衰退は避けられないと警鐘を鳴らすのです。
ル・ボンはまた、こうした群衆心理が為政者や新聞・雑誌等のメディアによってたやすく扇動されてしまうことにも警告を発します。政治家やメディアは、しばしば、精緻な論理などを打ち捨て、「断言」「反復」「感染」という手法を使って、群衆たちに「紋切り型のイメージ」「粗雑な陰謀論」「敵-味方の単純図式」を流布していきます。
極度に単純化されたイメージに暗示を受けた群衆は、あるいは暴徒と化し、あるいは無実の民を断頭台へと送り込むところまで暴走を始めます。こうなると、もはや事実の検証や論理では止めることができなくなると、ル・ボンは慨嘆するのです。
(番組ホームページより抜粋。改行は当方)
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指南役はTwitterで政権批判などのつぶやきをしばしばお見掛けする、ライターの武田砂鉄さん。
「群衆は理性によって動くことはなく、ただ、感情的に理解できたものだけに従い行動する」これはまさにそうだと腑に落ちる。この何十年もの間、リベラル派と言われる人たちは、この、「人々の理性」に訴えてきた。そうして、ほとんど成果を得られないまま今日に至っている、と思う。
今の分かり易さは閉じていく方向で、最近「論破」という言葉が人気だけれど、単純化と論破は相性がいいと武田氏は言う。番組進行役の一人である伊集院光氏の言う、話し合いはそれぞれの色味を混ぜていくこと、正しいのは折衷案を作っていくこと、というのはまさに本来の民主主義の在り方だと思う。
群衆は言葉と標語によって動かされるから、政治家はそうした群衆を引き付ける言葉を繰り返すことで彼らを暗示にかけることができると言い、武田氏はその例として「安心・安全」や昨年オリンピックの1年延期を決めた時の「新型コロナに打ち勝った証として」などの言葉を上げる。
安心・安全とはどういうこと、打ち勝ったとはどういうことかについては明言しない。その輪郭はどういうものと問いかけても、また「安心・安全」と返ってくるだけ。まさにル・ボンの言っている標語だと、鋭く前・現政権のまやかしに言及していた。
政権側がル・ボンの著書を読んでいるかどうかは分からないが、こうした群衆を操る方法の指南を受けているであろうことは推察される。資金も相当つぎ込んでいることだろう。それに比べて野党側は、あまりに正攻法で生硬にすぎるような気がする。目的を達成するためには、もう少ししたたかに策略を巡らせる必要がある。それは応援する市民の側にも言えることだ。
『群衆心理』は現在3回目まで放送が終わり、来週27日に最終の第4回を放送予定。
群衆心理・・・。 (Gigazineさんのサイトよりお借りしました)