あとは野となれ山となれ

こどもや動物、みんなが安心して暮らせる世界でありますように・・・

良い物語と美味しいもの、原田ひ香著『古本食堂』は最強だ

またしても素晴らしい本に出合ってしまった。これだから読書はやめられない!と感じさせてくれた。著者はこんなに印象的な名前で、2007年にすばる文学賞を受賞後すでに著作も随分出ているようなのに、全く知らなかった。本作は今年の3月に出版(初出は昨年の「ランティエ」)されたばかりの著者の最新作だ。

 

帯広で暮らす鷹島珊瑚は、介護ヘルパーをしながら、老いた両親の世話もしてきた。その両親を見送り自身のこれからを考え始めたところに、神保町で古本屋を営んでいた次兄滋郎の急死の報が入る。とりあえず一人暮らしだった滋郎の身辺整理や後片付けのため、母と暮らした帯広のマンションを引き払い神保町に移る。

 

こうして珊瑚のにわか古書店主の日々が始まる。生前の滋郎大叔父に可愛がられていた美希喜(みきき)は、神保町に近い女子大の国文科の学生で、バイトとして慣れない珊瑚を助けてくれる。両隣の店の店主や、古書店の入るビル(実は滋郎の所有だった)の2、3階を借りている辻堂出版の社長ら周囲の人物もみな温かく、陰に日向に珊瑚を助ける。

 

本好きにはたまらないであろう神保町という街を舞台に、こうした人々の温かな交流と、古書店を訪れる客との出来事が綴られる。古書店には慣れていないであろう客の、「写真のないお弁当の本」などというとんでもない注文を受けたり、時には「滋郎と事実婚状態だった自分に許可なくこの店を継いで!」と女が怒鳴り込んでくることも・・・。

 

6冊の実際の本が各話のタイトルになっていて、物語の中にもそれ以外の様々な本が登場する。それと同時に、神保町周辺の名店や美味しいものが話の魅力的なアクセントになっていて、本と美味しいものが好きな人にはたまらない。登場人物もそれぞれ魅力的で、若者も、老いの入り口に立つ人も、改めて自分の人生の愛おしさを考えさせられるだろう。

 

 

この本を片手に、神保町巡りのために上京するのもいいなあという気分になった。