あとは野となれ山となれ

たいせつなものは目に見えないんだよ

魅力的な食べっぷり

ドラマファンなら、もうこのタイトルで何のドラマか分かるかもしれない。そう、杉咲花さん主演の『アンメット』だ。

 

杉咲さん演じる川内ミヤビは、事故で脳を損傷したため記憶障害を持つ脳外科医だ。過去2年間の記憶がなく、今日のことも明日にはすべて忘れてしまう。そのためノートにその日の出来事を詳細に記録し、朝起きるとまずそのノートを読んでそれまでの自分を記憶し直すという日々を送っている。

 

彼女の記憶障害は治す方法がないと主治医の大迫教授(井浦新)は言い、アメリカの大学病院から赴任してきた脳外科医三瓶(若葉竜也)は、ミヤビに「君と僕は婚約していた」と言い、なんとか彼女を治したいと思っている。

 

大迫教授も三瓶医師もミステリアスだし、教授の秘書の西島(生田絵梨花)もその婚約者綾野(岡山天音)も何やら秘密を抱えていそうだが、それぞれ事情はありそうなものの、今のところどの人物にも陰湿な悪意などはなく、ミヤビを取り巻く医療チームのチームワークも良く、気持ちよく見られる良いドラマになっている。

 

テレビでの露出の少なかった若葉さんの演技にも目を奪われるが、毎回描かれるミヤビの食事シーンでの、杉咲さんの食べっぷりが実に気持ちよい。ドラマ内で綾野に「ひと口がでかい」と評される場面もあって、そういう設定になっているようだ。ここ2年の記憶がないばかりか、毎日の記憶が消えてしまうという大変な状況にありながら、この小気味よい食べっぷりにミヤビの前向きに生きる力を感じる。

 

そしてそんな、いっぱい頬張りながらしゃべるというシーンが多いのに、下品にならずミヤビという女性を魅力的に演じる杉咲さんはすごいと思う。ただセリフの言い方で、言葉の切れ目の助詞を強めに言う癖があり、それが増えるとあまり知的に見えなくなる。以前NHKのドラマでは非常に気になったが、今回のドラマでは医師という職業を意識してか、比較的抑えられている(本人か演出か)ようでぜひこの調子で願いたい。

 

 

今日のことが明日になると消えていると言うと、2015年の新垣結衣さんと岡田将生さんの『掟上今日子の備忘録』を思い出す。明日になるとすべて忘れてしまうため、「どんな事件も今日一日で解決する最速の探偵」今日子だが、彼女を思う隠館厄介(岡田将生)のせつなさが胸にしみる作品だった。

 

さて、アンメットはこれまた原作は漫画で現在も連載中らしい。はたして婚約していたというミヤビと三瓶はどうなるのか。綾野の思いはどこにあるのか。ミヤビの記憶は戻るのか・・・と興味は尽きず、最終回まで楽しみに追いたい。