春ドラマが続々と最終回を迎えている。脱落してしまったものや、終わってもどうということもないものも多いが、『アンメット』はあの心地良い仲間たちにもう会えないかと思うと寂しい。でも、毎シーズン一作くらいは放映を心待ちにする作品があるので、また夏ドラマでもきっと良い作品と巡り合えるだろう。
それにしても『アンメット』は、始まった時にはそれほど豪華と思える俳優陣でもなかった(若葉さんは地上波では知名度がなかったし、主役級ばかり揃えたような他のドラマに比べると)けれど、蓋を開けてみれば素晴らしい内容で、役者陣も意表を突かれた吉瀬美智子さん始め、どなたも素晴らしい演技で心をつかまれた。
今まで杉咲花さんとは何度も共演していらしたようで、息もぴったりな感じの若葉竜也さんは、抑えた演技ながらグイグイと見ているものに迫って来る。『アンチヒーロー』の野村萬斎さんの演技と好対照だった。
『日曜劇場』は『半沢直樹』以来、古典芸能の世界の役者さんにはああした大げさな演技が求められているのかも知れないけれど、私はちょっと苦手だ。萬斎さんなら、もっと抑えた演技でも怖さは表現できたのではないだろうかと思う。それとも、あまりに怖ろしくなりすぎないよう、オーバーにして喜劇味を出したかったのだろうか。
なんにしても『アンメット』を見ると、人が死ななくても、憎しみや復讐がなくても、出世のための足の引っ張り合いがなくても、いくらでも視聴者を引き付ける素晴らしいドラマは作れるのだと再確認する。いやむしろ、現実世界でもフィクションの世界でも、もう嫌というほどそんなものばかり見せつけられているので、このドラマのような物語を見ると、心が洗われる気がする。
主人公の背負っている病は非常に深刻なのだけれど、全編を通して飲食シーンが多く、しかも主人公の食べっぷりが以前も書いたように実に小気味よく、それがこの物語を前向きな明るいものにしている。また主人公が、自身の深刻な病状にもくよくよすることなく最善を尽くして生きようとする姿勢に、ドラマの中の仲間たちも見ている私たちも、とても勇気づけられる。どんな状況にあっても、前向きに生きなくては!と思わせてくれる。
来週はいよいよ最終回だ。心して見よう。
息ピッタリの二人。