あとは野となれ山となれ

蓮舫さん応援のため東京にスタンディングに行きたい気分だ!

ヴァルデミールが寂しくありませんように!

テレビドラマの端境期になり、またネットフリックスでも特に気に入った連続ドラマの作品に出合えず(2時間前後という映画を見るのはちょっと覚悟が必要で)、撮りためた録画をあさっていて3か月も前のNHKスペシャル『ひとりぼっちのスパイ・イルカ』に出合った。

 

2019年にノルウェーの最北の街ハンメルフェストの海で発見されたシロイルカは、ハーネスを装着していた。まるでそれを取って欲しいというように、発見者の船に近づいてきたのだそうだ。外してみるとそのハーネスはロシア製で、どうやらそのシロイルカはロシアでスパイとして訓練されていたらしいとのこと。

 

幼いころから人間のもとで訓練されたため、自分のことはクジラというよりヒトと思っているんじゃないかとさえ思える愛らしい姿だ。彼はヴァルデミールと名付けられ、自由になっても人間のそばを離れようとせず、現地の人々に愛される。ヴァル(Hval)はノルウェー語でクジラを意味し、それにプーチンのウラジミールをくっつけた、ちょっと皮肉とユーモアが込められた名前だ。

 

普通のクジラは群れで行動し鳴き声でコミュニケーションをとるが、人間に飼育されたヴァルデミールはほとんど声を発しないという。専門家たちはなんとか彼を自然界に帰したいと努力したが、餌をとることは何とか覚えたものの、どうしても外洋へは行こうとしない。

 

投げたボールを拾ってきたり、海に落としたスマホを拾ってくれたり頭をなでさせたり、愛らしい姿の動画は拡散されどんどん人気者になる。そうして多くの人が集まるようになれば、また問題も発生してくる。未熟なボート操作でヴァルデミールに近づき、スクリューで彼を傷つけてしまうことも。いずれ近づきすぎた人間たちと間違ってトラブルが起きれば、悪意がなくとも、ヴァルデミールを処分などということも起きかねない。

 

こうした海洋生物の軍事目的での利用は1960年代の東西冷戦時代に始まり、今も続けられているのだそうだ。現在アメリカ海軍では70頭ほどのイルカが訓練されているという。機雷を探知したりハーネスにカメラを装着して敵の動きを監視する。イラク戦争の前線にも派遣されたそうだ。元アメリカ海軍の軍用生物の訓練士は、イルカの鼻に装着する武器も紹介し、自爆する危険性もあるので人間でなくイルカにやらせるんだと話した。

 

ノルウェーに近いロシアのムルマンスクにはロシア海軍の基地があり、そこの海の衛星写真にはヴァルデミールのような海洋生物を飼育しているらしい囲いと、その中にいる白い生き物が映っていた。このような動物虐待が現在進行形で行われているということに胸が痛む。

 

番組では最後に、人間に飼育された動物をどう自然に帰していくのか、新しい取り組みを紹介していた。カナダ東部に海洋動物の保護区、サンクチュアリを建設中だという。展示施設で飼育されたシャチやイルカなどを引き受けるのだそうだ。

 

ヴァルデミールが見つかったノルウェーのハンメルフェストにも、保護区を作る計画が持ち上がっているという。ヴァルデミールが何を望んでいるのかは分からないが、どうすることが彼らの幸せかを人間が考える必要があると結んでいた。

 

ヴァルデミールは最近少し鳴き声を発するようになり、 他のクジラとコミュニケーションをとっているらしい。また、他のクジラと泳ぐ姿も確認されているという。良いパートナーを見つけ、家族を作ることができたら良いのだけれど・・・。