あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

怠け心にあらがう日々

今のところ元日から休まず筋トレストレッチができているけれど、正直に言えば、毎日怠けたい気持ちとの戦いだ。ほんの20分か30分で、メニューもさほど辛いものがあるわけではないが、それでもやっぱり「サボりたいよね。一日くらいいいんじゃない?」という声がささやきかけてくる。

 

毎日厳しいトレーニングをしなければならないアスリートは、さぞ大変なことだろうと思う。退職してからちょっとだけ地元の劇団に入ったので、役者とて日々鍛錬が必要なことも知っている。人より抜きんでて活躍するのは、生半可なことではない。

 

それにしても、その厳しいトレーニングに励んでいるアスリートたちに、半年後本当に鍛錬の成果を発揮するチャンスがあるのだろうか。毎朝ニュースのなかのスポーツコーナーで、オリンピックやパラリンピックの候補選手の報道を見るたびに、いたずらに希望を持たせるような今の状況が気の毒に思えてならない。

 

まあ、関係するお偉方がみな「絶対に実施する!」と豪語しているのだから、無観客だろうと参加する国が少なくなろうと、開催するのかも知れないけれど・・・。でも、去年ギリギリまで予定通り開催すると言っていた舌の根も乾かないうちに、一年延期と平然と宣言した実績?もある。

 

お店をたたまざるを得ないとか、仕事がなくなり食べていけないとか、ギリギリの状況に追い込まれている人たちや、ろくに休みも取れず毎日大変な業務に追われている方たちを思えば、アスリートの悩みはまだ恵まれているほうだろうか。それにしても、この国では、政治によってコロナ禍の苦しみは確実に増幅されている。

 

 

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暮れにお歳暮の手配で佃煮屋さんに行った時、自家消費用に1箱送っておいた。その中の「大葉ちりめん」でパスタ。ご飯に合うものはたいていパンやパスタにも合う。あいにく緑のものがねぎしかなく、トッピングまで和風に。

(大葉の生産は豊橋市が全国一。愛知県産が全国シェアの半分ほどを占め、そのうち豊橋産が30%前後を占めるそうだ。)

 

 

 

読書感想初めは、少々怖い『パレード』吉田修一著

新年の最初にご紹介するには少々毒が強い気のする作品だけれど、今日は5日、そろそろお屠蘇気分も振り切って日常に戻らねば!という気分の切り替えにはなるかも知れない。

 

年末に民生委員の用事で校区市民館に行った折り、図書室で吉田修一さんの『青春』という分厚い本を見つけ借りてきた(いつも利用しているのは中学校区ごとに設置されている地区市民館で、校区市民館の方は小学校区ごとに設置されている)。

 

600ページを超える分厚い本は、さらに細かな活字の二段組みで、著者の作品から青春ものに分類できるものを集めた作品集になっている。このほか「恋愛」「犯罪」「長崎」とあるらしい(「長崎」は今年3月刊行予定)。

 

このコレクションの最後に、ちょうど読んでみたいと思っていた山本周五郎賞受賞作『パレード』が収録されていた。今まで読んだ吉田さんの作品が比較的爽やかなものが多かったし、2010年に映画化もされていたようだが私は全く知らなかったので、まさか読み終えてじわっと怖ろしさに包まれることになるとは思いもしなかった。

 

物語はルームシェアをして暮らす主要登場人物男女5人の、それぞれの視点で語られる連作短編のような形で進む。最初の語り手が「横道世之介」を彷彿とさせるのんきな大学生良介なので、すっかり「横道」のようなのどかな青春物語だと思って読んでいると、二番手、三番手と徐々に不穏な空気が流れ始め、結構危なさを秘めた人たちではないかと感じ出す。

 

主な舞台となるマンションは、もともとインディペンデントの映画配給会社に勤める直輝が恋人の美咲と住んでいたのだが、二人の間に微妙な空気が流れるようになって、直輝の後輩の後輩という良介が緩衝材のように取り込まれ、やがて恋人である売り出し中の俳優を追って上京した琴美や、イラストレーター兼雑貨屋店長で大酒飲みの未来が同居するようになり、いつのまにか「夜のお仕事」勤務の少年サトルが加わる(美咲は途中で他の恋人を作りいなくなる)。

 

環境も性格もまるで違う男女ながら、和気あいあいとした日々が流れているのだが、その穏やかさは、誰もがそこに「必要とされる」自分を演じているからではないかということが見えてくる。

 

意外な人の意外な顔が暴かれ愕然としていると、最後にさらなる衝撃が来て、読み手はその静かな怖さの中に取り残される・・・。

 

 

これから読もうと思う方のために詳しくは書かないが、現代の若者の側面を鋭くとらえているのではないかと感じた。空気を読んで、求められる行動をしてしまう。傷つくことを恐れて、深く交わろうとしない。

 

子供たちは、このようになろうと思ってなったのではない。子供の数も少なく、嫌でも濃密な親子関係になり、良くも悪くも息苦しい子供時代になりがちだ。呑気だと思っていた良介に、一瞬だけえっと思う行動があるが、こういう瞬間が誰にでもあるのではないかと思う。大人の目が届かなかった昔なら、子供の集団の中で小さな爆発のさせ方を知らず知らず学び、解消されていったのかも知れない。現代ではみんなこぢんまりとお利口さんに育ち、大きな爆発の種を抱え込んでいるのかも知れない。

 

一読では消化不良で、ネットで他の方たちの感想を探してしまった。同じような方が多かったらしく、「〇〇の理由が分からずこちらのサイトにたどり着きました」というようなコメントにも出合った。

 

それらを参考にして読み返してみると、この部分にこんな意味があったのではないか、ああ、ここでこんなふうに兆しが・・・などの発見もあった。自分は全然こんなおかしな人たちとは違う・・・と思っても、案外自分の中にも閉じ込め飼いならした怒りや、枠をはずしたい欲求があるのかも知れない。

 

だからと言ってこの物語の場合、どこでどうしていたら穏やかな未来につながったのかも分からないのだけれど、やはり生身の人間が暮らすこの世は、ぶつかり合うことを恐れてはだめなのではないか。リモートで済むことも少なくないけれど、大切な人ときちんとつながるためには、じかに触れあい、言葉にする、分からなければ聞き直す、何度でも分かるまで聞き直す、そんな単純なことが必要なのではないかという気がする。

 

でも、下にどんな残虐シーンが録画されていようが、楽しいピンクパンサーの行進を上書きしちゃえば(ビデオテープじゃない今は、ちょっとピンとこない表現になってしまった)いいじゃない、表面的だろうと、賑やかなパレードが楽しくていいよ、真実って何?と考える人もまた、いることだろう。

 

そんなことを考えさせてくれる作品だった。

 

 

 

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2021年のスタンディング初め!

今日午後1時に駅前でスタンディングをするという。新年最初だし、”言い出しっぺ”がピックアップもしてくれると言うので、参加することにした。

 

2015年に作家の澤地久枝さんの提唱で始まった、毎月3日の「アベ政治を許さない」の抗議活動。私は参加しなくなってすでに何年かたっていると思うけれど、安倍政治が一応終焉した今も、プラカードの内容を少し変えたりして、継続している方たちがいたらしい。この粘り強い継続の力には敬意を表したい。継続していたから、今日のスタンディングもあったのだろう。

 

5年前の正月3日のスタンディングのことに触れたエントリー:

yonnbaba.hatenablog.com

 

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今日のスタンディングメンバー。撮影中が私を含め2名、写真に納まらず帰ってしまった人を入れ、総勢14名だった。

 

ワンピースで参加した私は、30分じっと立っていると、タイツにブーツでもさすがにちょっと寒かった。駅前の人出は、普段の休日と変わらない感じだったが、これまで何回か元日や3日にスタンディングした経験から、我が市ではそもそも正月だからと言って駅前の人出は多くないので、特にコロナの影響とは言えないと思う。

 

 

ともあれ、あと2週間もしないうちに大学入学共通テストを迎えるのだけれど、そうしたこと、政府のお偉方や文科省の役人たちは、ちゃんと手を打ち、あらゆることを想定に入れて、対策を講じているのだろうか。

 

それでなくても、今年度は授業がボロボロだったのだから、大学に限らず、受験生やご家族はじめ関係する人たちはさぞや気をもんでいることだろう。どのようなことになったとしても、みんな自分の最善の力が発揮できますよう・・・。

 

新年のご挨拶

みなさま

新年あけましておめでとうございます。

 

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                   (おとぼけ猫ちゃんの画像はピンタレストからお借りしました)

 

2021年1月1日

郵便受けに配達の方への感謝のメッセージを掲示しようと思っていたのに、朝風呂にのんびりつかっている私の耳にバイクの音。時刻はまだ8時になったかならないかだというのに、まさか・・・。

 

身支度を済ませて出てみると、怖れた通り、すでに郵便受けには賀状の束が入っていた。ああ、新年早々もう失敗してしまった。今まではこんなに早く配達されなかったと思うのだけれど。あとの後悔先に立たず。

 

もう和服を着るパワーはないので、グレーのボトムにトップはピンクと柔らかい色を選び、真珠のアクセサリーでちょっとだけ正月気分を添える。ごく質素に準備したおせちと三河のシンプル雑煮、そしてお屠蘇代わりの金箔入りの日本酒で静かに新年を祝う。

 

いただいた方に賀状を書き、投函に出る。少々風が強いけれど、空は青く気持ちの良いお天気だ。昨年から、暮れに用意するのでなく、届いた賀状にお返しする形に変えた。添えられたひと言をかみしめながら、ゆっくりしたためる・・・。

 

 

帰宅するとあとはネットフリックス三昧。こうして、ありがたいのどかな新年の一日が暮れた。

 

 

「あとは野となれ山となれ」、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

みなさま良いお年を!

年々横着になって、世の中の多くの方々がバタバタとせわしい日々を送っていらっしゃるときにもかかわらず、普段通りの暮らしの私。

 

コロナのお陰で帰省客もない今年は、除夜の鐘が鳴り終えるまででも、初日が昇る瞬間からでも、書こうと思えばブログを書いていられるけれど、ブログどころではない多くの方に倣って、そろそろ今年の更新を終えることにしようと思います。

 

股関節の手術をした一昨年。インビザライン歯列矯正に取り組んだ昨年。それに比べると、今年はただただコロナ騒ぎの中で、私自身は多くの公的な予定もボランティアの予定も消え、いっそう自由な時間が多く特筆すべきこともない、まさにSTAY HOMEの1年でした。

 

生活の困窮、激務の仕事と、大変な思いをなさっている方々に比べ、こうして穏やかに年を越えられそうなことは、本当にもったいなくありがたいことだと思います。

 

1年間、多くの方々のブログに教えられ、励まされました。ありがとうございました。また、私自身もこのブログを綴ることが、日々の大きな張り合いになっています。一人で日記帳に書くのと違って、スターを付けていただいたり、コメントをいただいたりすることに喜びを感じます。だから、旧ブログから引っ越してでも、書き続けることを選びました。

 

どうか、年ばかり重ねながら、いつまでも未熟な私ですが、来年もよろしくお願いいたします。

みなさま、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ!

 

 

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何年ぶり?かの電器店

今年最後の墓参に出たついでに、霊園の近くにある大型電器店に寄った。今使っているノートパソコンは15.6インチ型だが、動画はHDMIケーブルでつないでテレビで見ることができるので、新しいパソコンはもっと小型のものでもいいかも知れないと思い、14とか13インチクラスのものがどんな感じか見てみたいと思ったのだ。

 

電器店を訪れるのは久しぶりだ。おそらく2年とか3年とかはゆうに過ぎているだろう。ネットで調べたものと同じタイプが陳列されているわけではないので、単純な比較はできないけれど、買おうと思っているメーカーの同程度のスペックのものを見ると、やはりネットの方が断然安い。設置サービス付きなどという魅力的なシールが貼られているが、初心者ではなく、もう5台目のマシンを買おうというのだから、頭の老化を防ぐためにも、ネットで購入して自力でデータ移動や設定作業をしようと思い、観察だけにとどめる。

 

せっかく来たついでに、購入して15年経過している冷蔵庫も買い替え予備軍なので、見ていくことにした。台所の動線からすると左開きのシャープに魅力を感じるが、色が白の一色のみとのこと。押しの強いおじさんの店員が、強力に日立のものを薦めてきた。確かにモーター物は日立は定評があり、私も2台目までは日立製品を使っていた。今度購入すれば、嫁入り道具に購入したものから数えて4台目の冷蔵庫になる。まだあと一回は買い替えるのだろうか。長生きすれば、二回必要になるだろうか・・・。

 

突然の故障の時などにすぐ飛んできてもらえるよう、近所の電気屋さんともお付き合いがあるので、いちおう値段を問い合わせたいと言ったからか、おじさんの店員は急にそっけなくなった。冷蔵庫は以前は秋に新製品が出たので、夏あたりが買い時だったが、今は春に新製品発売なので、ちょうど今は買い頃との話だった。帰宅してネットで調べると、今も冷蔵庫の新型の発売は10月のようで、あの店員の話はマユツバな気がする。

 

それでも、近所の小さな電気屋さんで出せる値段は、おそらくおじさん店員の提示したものとはかなり開きがあるだろうから、結局こちらで買うことにするかもしれない。考えてみたら、豊橋に戻って27年、電気屋さんにSOSを発信したことはない。いや、高齢になってこれから必要になるのかも知れないけれど。

 

帰宅して早速パソコンで調べ物をしていたら、突然プチッと音を立てて電源が落ちてしまった。座る場所の関係で充電状態で使っていたのだが、モデムの場所を替えて危機は乗り切ったと思ったのに、やはりもう寿命が来たのか。このまま立ち上がらくなったら、データの移動どころではない・・・と、冷や汗が流れた。コードを伸ばしてつなぎ、電源を入れなおすといつも通りに始動したのでほっと胸をなでおろした。

 

それにしても、やはりもうパソコンの買い替えは急いだ方が良さそうだ。

 

 

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来年早々パソコンに冷蔵庫?人間は大変ね。   byオーガスト

映像も物語も美しい『ロンドン、人生はじめます』

またまた大ベテラン女優の楽しい映画に出合った。今度はダイアン・キートン。2017年の作品なので、撮影時彼女は71歳だけれど、実にチャーミングで、カジュアルながら知性の香るファッションを素敵に着こなしている。

 

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相手役を務めるのは、『ハリー・ポッター』でマッドアイ・ムーディーを演じたブレンダン・グリーソン。老け作りの上に、森にすむ変人とあって、見た目はいくらロマンチックコメディとはいえ、ダイアンの相手役とは思えない風貌だ。でも、これが物語の良い味付けになっている。

 

ロンドン郊外の高級住宅地“ハムステッド”(映画の原題『ハムステッド』)で、実際にあった奇跡のようなお話をもとに作られている。高級マンションで暮らすエミリー(ダイアン)は、夫の死後彼の浮気や残された多額の借金を知り、いささか投げやりな日々を過ごしている。

 

くさくさした気分でマンションの屋根裏部屋に行った彼女は、そこで見つけた年代物の双眼鏡を手に取りなにげなく窓から覗く。するとその視界に近所の森の掘っ立て小屋が入り、そこで暮らすホームレスのような男性を知る。

 

興味をそそられてそこを訪ねて行った彼女は、そばの池で釣りをするその男性ドナルド(ブレンダン・グリーソン)と顔を合わせ話し始めるが、彼女のある言葉が彼を激怒させ、けんか別れになってしまう。このあとドナルドが実に洒落た方法で彼女に許しを請うのだが、これは見てのお楽しみ。

 

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住む世界の全く違う2人が、共感したり反発したり、間の悪い巡り合わせで誤解を生んだり・・・とよくある恋愛物語の展開があり、やがて大変な問題が持ち上がる。ドナルドの住んでいる土地は病院の跡地で、再開発をもくろむ不動産開発業者から立ち退きを迫られ、嫌がらせまで受けるようになる・・・。

 

 

既成の価値観の中で、なんとなく居心地の悪さを感じながらも、そこから踏み出せず流されるように生きていたエミリーだったが、ドナルドの自由な生き方に影響されて、自らの人生を見つめ直していく。ハムステッドという、物語の舞台となっている街も、ドナルドの暮らす森も大変美しく、ダイアンのファッションも素敵で、映像を見ているだけでも楽しい。

 

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私はエミリーの暮らす高級マンションよりも、あふれる緑と可憐な草花に囲まれたドナルドの手作りの掘っ立て小屋の方を好む人間なので、彼女の悩みにはまるで共感は覚えない。借金を清算した残りのお金で移ったのだから、当然以前のマンションよりずっとレベルは下がるのだろうが、あとで暮らすことになった田舎の家の方が私にははるかに魅力的に見える。さっさとそうすれば良かったのにと思うが、そうしていたらドナルドと出会えなかった!

 

せっかく障害が除かれながらも、やがて将来の考え方に違いが出て二人は決別してしまう。ドナルドはあくまでも森に住み続けたかったし、おそらくそれ以上に、過去に人間関係で深く傷ついていた彼は、エミリーが常識にとらわれて自分の世界から踏み出せなかったように、怖くて自分のテリトリーから出られなかったのではないかと思う。

 

もちろん、ロマンチックコメディなのでめでたしめでたしになるのだけれど、ラストがまたお洒落で可愛らしくて、とてもいい。

 

美しい画面にウットリして見るうちに、常識や過去の失敗に縛られていないで、自由に自分らしく生きることの大切さに気付かせてくれる映画だった。

 

 

(画像は各種映画サイトからお借りしています)