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あったかいココアと『それからはスープのことばかり考えて暮らした』

雨が舗装を叩く音が部屋の中まで聞こえてくる。おまけに寒い。こんな日は、体も心もぬくめてくれる、あったかいココアを飲みたくなる。

 

ほぼ一年中ホットコーヒー党の私だけれど、寒い季節だけは時々ココアをはさみたくなる。私にとって忘れられないココアは、半世紀ほど昔に飲んだ京王プラザホテルのティーラウンジのココア(そこでのメニュー名はホットチョコレートだったかもしれない)だ。

 

そのときのウットリするような美味しさにまたあいたくて、いろいろな場所でココアを頼んできたが、あの時のように満足する味には出合えない。シチュエーションが隠し味になっていたのかも知れないし、記憶が美化されてしまっているのかも知れない。

 

今朝も早くに目が覚めてしまい、朝食も早かった。それでお茶の時間までのあいだにプチブレイク(一日中ブレイクみたいな生活だが)でココアを飲もうと思ったのだけれど、あいにく今シーズンはまだココアを用意していない。それで、なにかでもらったきり減っていないカフェオレスティックで我慢することにした。

 

昨日から読み始めて、今日もカフェオレを飲みながら心地よく読み続け、そして読み終えた吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』も、そんなココアのように、心も体もほっとさせてくれる物語だった。

 

主人公は古い映画を見るのが好きな青年オーリィ君(ほんとの名前は大里だが、周囲の皆はこう呼ぶ)、もっか失業中なのだけれど、毎日商店街のはずれのサンドイッチ屋さんに通い、路面電車でひと駅先の映画館「月舟シネマ」に、大好きな脇役(というよりチョイ役・端役に近い)女優の出ている古い日本映画を見に通いつめるような呑気な生活をしている。

 

ある日サンドイッチ屋の店主に「そんな生活をしていてはいけない」と言われ、てっきりぐうたらな生活を叱られると重い肩をすくめていると、「うちで働いてくれないか」という誘いだった。

 

こうして主人公がサンドイッチ店「トロワ」の店員になり、店主の安藤さん、その息子の小学生リツ君、オーリィ君が住んでいるアパートの大家さんのマダム、そして映画館でいつも一緒になる不思議な緑色の帽子の女性などと関わる日々が描かれる。

 

「トロワ」のサンドイッチは人気を呼び繁盛していたが、駅前にライバル店ができて急激に客足に陰りが見え始め、また初めての冬を前に、寒くなればますます冷たいサンドイッチは売れなくなるのではないかと、安藤さんはスープを売り出そうと思いつき、そのスープの製作をオーリィ君に任せる。それからというもの、題名通りの、スープのことばかり考えるオーリィ君の毎日が始まる・・・。

 

半径数キロ圏内を舞台に、ほとんど顔見知りのご近所さんばかりという登場人物たちが、なんということもなく平穏に過ごす日々を描いているだけの物語なのだけれど、今の私にはこれがなんとも心地よい。サンドイッチは瑞々しく、スープも、後半で登場する「夜鳴きそば」も「シズル感」たっぷりで非常に美味しそうで幸せな気分にしてくれる。

 

この作品を原作にすれば、以前に見た『パンとスープとネコ日和』のような、ほっこりした良いドラマが作れそうだ。

 

yonnbaba.hatenablog.com

 

 

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さすが「暮しの手帖社」、装丁や挿絵の雰囲気も物語にピッタリ!

 

 

美味しそうなホットチョコレートが出てくる映画

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