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タイムリーだった『カッコウの卵は誰のもの』東野圭吾著

私は全く見てはいないけれど、ちょうど北京オリンピックが開催されている時期に、そうとは知らずにスキー競技がテーマの作品を読んだ。

 

元オリンピック選手である父を持ち、今後の活躍が期待されるアルペン競技の選手緋田風美と、無酸素登頂を得意としながら怪我のため登山家として一線を退いた父親を持つ、クロスカントリー選手の鳥越伸吾。二人の若者の周辺に渦巻く事件や人間模様を描く。

 

物語の主人公は、新生開発スポーツ科学研究所の副所長で、遺伝子情報から将来有望な選手を発掘することに情熱を傾ける柚木洋輔と、早くに妻が自死したため、風美を男手一つで育てる宏昌の二人だろうか。6年前WOWOWでドラマ化された時には、柚木を戸次重幸さん、宏昌を伊原剛志さんが演じていて、風美が土屋太鳳さんなので、ドラマは彼女を中心にした物語になったのだろう。

 

現代の実際の遺伝子の研究でも、瞬発系の能力に優れるFタイプと、持久系の能力に優れるGタイプがあることが分かっているらしいが、この物語では、視覚情報処理とボディバランスに優れるFパターン遺伝子を持っているとみられる風美、持久力に優れるBパターンの遺伝子を受け継いでいるとみられる伸吾、というふうに描かれている。

 

風美のほうは幼いころから父親の薫陶を受け、自分でも世界のトップアスリートになるべく励んでいるが、伸吾のほうは音楽に惹かれていて、突然現れた柚木に、困窮している生活の保障と引き換えにアルペンの選手になるよう言われ、しぶしぶ練習に励んでいる。  

 

そんななか新生開発スキー部に、風美をワールドカップなどのメンバーから外せと脅迫状が届き、物語は動き出す。

 

実は宏昌が海外遠征中に妊娠中の妻は流産しており、それを夫に伝えられなかった妻はどうやらよそから子供を奪って来て育てていたらしい。子供は妻の故郷の長岡から来たらしく、そこには風美と異母兄弟になるのかもしれない白血病の上条文也がいた。

 

こうして、3組の親子の物語が絡み合い、風美の出生の秘密を追う中でバス事故も起きて、さまざまな謎が解き明かされていくという、少々趣の変わったミステリーになっている。

 

全てが分かってみれば、いくぶん突っ込みたくなるところもないではないが、読んでいる間は、謎がどんどん深まり、骨髄移植で文也を救えるのかといったハラハラ感も重なり、引き込まれてしまう。

 

私自身は昔から、情は血ではなく、手をかけるから育まれるという考えなので、カッコウの狡猾な(カッコウにそこまでの策略があるのかどうか知らないが)托卵は別にして、子育てをした人が親だ、と思う。

 

鳥はオオヨシキリが育ててもカッコウの卵はカッコウになってしまうかもしれないけれど、ヒトは、能力が高いだけに、オオカミが育てればオオカミになってしまう。

 

 

それにしても、この物語を読んで、改めて現代のスポーツ界の問題を思った。柚木の所属する研究所は、スポーツ用品の会社が持っているものである。将来有望な選手を他に先駆けて発掘し、ワールドカップやオリンピックで活躍させ企業名を宣伝することに血道を上げている。

 

発掘、育成、用具やウエアと、国や大企業が湯水のように金を注ぎ込んだものが勝つ現代のスポーツ。へそ曲がりな私は、どうしても素直にスポーツを見て感動することができなくなってしまった。

 

 

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