あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

不器用な二人が愛おしい『自転車屋さんの高橋くん』

またしてもテレ東の深夜ドラマにはまっていたら、その作品がネットフリックスでも見られるようになり、「えっ、テレビより一足お先に全部見られちゃうの?!」と喜んだら、やはり放映されたところまでだった。そりゃそうか。

 

舞台は岐阜県大垣市で、今どきいくら地方都市でもこれは少々・・・と思うほどセクハラ・パワハラ満開の会社に勤めるアラサー女性パン子(内田理央)と、前髪金髪でタトゥーも入った元ヤンキーと思しき自転車屋さんの高橋くん(鈴木伸之)26歳、二人のほのぼのした恋の物語だ。

 

父親が外に女性を作って家を出、母親一人に育てられたパン子は、いまで言う「自己肯定感の低い」女性らしく、何でも自分が悪いと思い、職場での理不尽なことも我慢して受け入れがち。同期のキミちゃん(長井短)が陰に日向に守ってくれるが、そのキミちゃんは間もなく結婚退職してしまう。

 

自転車通勤のパン子の、通勤途上に高橋くんの自転車屋さんはあり、ある日自転車のチェーンが外れて困っているのを直してくれて、パン子は高橋くんと知り合うのだが、どうも高橋くんのほうはパン子を以前から知っている様子がみえる。ここが気になって、ネトフリで見られるかと喜んだのだけれど・・・。

 

この高橋くんが一見怖い人だし、大変に口数が少なく不愛想なのだが、優しくて子供好きでなかなかに魅力的なキャラクター。まあ、「元ヤン」によくあるタイプなのかも知れないけれど、『恋です!ヤンキー君と白杖ガール』の獅子王と同様、鈴木伸之君によく似合っていて素敵なのだ。

 

前回、台風で新幹線や電車が止まっている状況下で、東京の実家に残した愛犬たもつが危篤ということで、高橋くんは自分の軽トラにパン子を乗せて飛んで行った。帰り道のファミリーレストランで、彼は美しい女性(大沢健)にいきなり「お父!」と怒鳴りつけていく。

 

どうやら高橋くんを捨てた父親らしい。自分を捨てて祖父に任せたきり、一度たりとも様子さえ尋ねてこなかった父親の非情に高橋くんは激怒する。殴りかかりかねないところをパン子がなんとかなだめてその場を離れたのだが、こうして高橋くんの側の事情や、パン子の家庭、母親との微妙な関係などもしだいに分かっていく。

 

二人とも複雑な家庭事情で、親に甘えることができずに育ったらしい。二人の寂しさや不器用さの背景が分かるにつれ、ますます主人公たちへの愛おしさが増していく。

 

オープニングで、時間のないパン子が焼き上がった食パンをくわえて自転車で出勤するシーンはちょっといただけないが、原作が漫画でもあり、ま、ドラマだし・・・と大目に見ている。

 

この愛すべき不器用な二人の交際が、これからどんなふうに発展するのか。そしてキミちゃんのいなくなった職場で、パン子はどう課長の横暴と対していくのか。酔いつぶれて高橋くんの背におぶさったとき、どうしてその背中を「懐かしい」とパン子が感じたのか・・・などが明かされるのを楽しみに見ていきたい。

 

 

 

たもつ。パン子より大きいグレートピレニーズとやら。