あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

恋愛って素敵と思える『キム秘書はいったいなぜ?』

若くして大企業ユミョングループの副会長を務めるイ・ヨンジュンは、飛び級をして2歳違いの兄と同じ学年で学んだほどの秀才だった。ビジネスにおいても完璧主義者の彼だったが、9年間にわたって秘書を務めてきたキム・ミソに「退職したい」と告げられにわかに歯車が狂い始める。

 

やっと彼女の「恋愛もして結婚もしたい」という言葉を聞きだすと、「俺が結婚してやるから仕事を続けろ」とまで言うが、彼女の決心を変えることは出来ない。それからツンデレ(初めのうちはツンデレまでもいかないツンツン男)副会長からキム秘書への猛烈な恋愛攻勢が始まる・・・。

 

こう書けばまさに典型的なラブコメストーリーなのだけれど、登場人物のキャラクターがよく描けていて、副会長がキム秘書に惹かれるのも、住む世界が違うと割り切っていたキム秘書が副会長に惹かれていってしまうのも非常に納得ができ、それゆえに主役二人の恋に肩入れしてしまう。

 

描き方もうまいのだが、副会長を演ずる塩顔の俳優(パク・ソジュン)がなにしろ魅力的で役にはまっている。ツンツンのナルシシストなのに、時折り見せる笑顔や情けない部分が非常に可愛らしい。

 

またそんな彼を支えるキム秘書を演じるパク・ミニョンは、大きな包容力で彼の母親のように感じる時もあれば、少女のような可愛さも見せる。財閥の御曹司で完璧な能力を持ちながら、子供の時に心と体に深い傷を負っているというややこしい副会長を受け止められるのは、彼女しかいないだろうなと思わせる。

 

主人公たちの周囲にも社内恋愛のカップルが誕生するが、その人たちもそれぞれ惹かれていくのが納得できる描かれ方で微笑ましい。見ているこちらも、いつの間にか人を愛するっていいなという気持ちになっている。

 

こんな明るく楽しいラブコメに、ちょっとミステリー要素がスパイスとして振りかけられ、主人公たちの幼い日にどんなことがあったのだろうという疑問がしだいに大きくなり、真相が分かるとともに、子供時代のちょっとした伏線が幸せなエピソードで回収されたりして楽しい。

 

『キム秘書は・・・』は1話60数分から70分で16回に対し、日本のドラマはだいたい46分くらいで10回前後。時間が半分以下だから物語の浅いものが多いのだろうか。恋愛ものでも、なぜこの人がこの人に惹かれるのかさっぱり分からないというようなものが多い。そういう所で納得させてくれないと、物語に入っていくことが難しく思う。映画などは2時間前後で描き、それでも引き込まれるものは引き込まれるのだから、単に時間の問題でもないだろう。

 

巷でどんなに韓流ドラマが話題になっても全く見ようとしなかった私も、次男の薦めで『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を見てからすっかりファンになってしまった。それでも日本のドラマに面白いものが多ければ、ネットフリックスで韓国のものまで見る時間は無くなるのだけれど・・・。さて、次はどんなドラマに出合えるだろう。