以前楽しみに見ていたドラマ『シェフは名探偵』の原作本の一冊。
ドラマを見てしまったので、どうしてもシェフは西島秀俊さんのイメージが強く、無精ひげを生やし口が悪く人当たりが良くないという三舟シェフ像は食い違う。それでも、この本を楽しむことは十分できる。
下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。スタッフ4人、カウンター7席、テーブル5つというこぢんまりとした店で繰り広げられる客たちのちょっとしたドラマ。その小さな事件の小さな手がかりから、三舟シェフはみごとに問題を見いだし謎解きをして見せる。
そこには、人々のちょっとした気持ちの行き違いや遠慮や誤解があるのだけれど、ひどい悪意や憎悪は存在しない。たまたまこのレストランに来て、シェフの解明で誤解や行き違いが解消されるけれど、そうでなければ互いの心は行き違い離れたままになる。人と人は、ちゃんと話して分かり合わないともったいないなと思う。
三舟シェフの謎解きも見事だけれど、この物語の一番の主役はフランス料理かも知れない。パ・マルのような親しみの持てるフレンチ・レストランが近くにあったら(私の家の近くに古民家を改造した素敵なフレンチ・レストランがあるけれど、少しばかり規模が大きい)、ぜひ時々行って、作品に登場するあれこれのメニューを注文してみたいものだと思う。ワインもグラス1杯くらいなら大丈夫かなあ?