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心地よい感動の青春物語『虹色の皿』拓未司著

王道の青春物語といえる作品だけれど、その王道ぶりが爽やかで気持ちよくさえ感じた。

 

主人公小西比呂は岐阜の高校を出て大阪の調理師専門学校に進み、卒業後は神戸のフレンチレストラン「シェ・ホンマ」に就職する。そこはフレンチを目指す料理人なら誰もが憧れる本間シェフの店で、2人の求人に対し全国から60人もの応募がある難関だった。

 

しかもその難関をめでたく突破して入ったそこは、自分で察して動かないと先輩の手も足も飛んでくる、体育会系もかくやと思われるような、すさまじく厳しい職場だった。

 

調理師学校で仲良くしていた仲間の一人圭吾は本場フランスに渡り、ハンサムな上お洒落で料理の呑み込みも早い洋介は、比呂と同じ神戸の別のフレンチレストランに就職し、比呂よりもはるかに良い労働条件で給料も良い。

 

比呂と同期に入った新人が辞めてしまったこともあり、1年で一番忙しいクリスマス時期、それでなくても、帰宅してもただ寝るだけという日々が、なんと休みも取れずに20日間も続くことになる。

 

歯を食いしばって頑張っていた比呂だが、バイクに乗って半分眠るようにして帰宅する途中事故に遭い、とうとうそのまま職場を放り出してしまう。

 

専門学校卒業後、あまりに忙しく働いてきた反動でしばらくブラブラしたあと、比呂はいい加減そうな店長が仕切るレストランバーでバーテンダーのアルバイトを始める。こうして主人公は目指していたフレンチの料理人の道から外れてしまうのだが、周囲の友人や憎からず思う女性美穂の協力などもあって・・・という物語だ。

 

調理師学校の教授や友人たち、シェ・ホンマのシェフや先輩たち、見た目はどんぴしゃりのタイプなのに中身が「大阪のおばちゃん」な美穂など、登場人物がみな生き生きと描かれていて魅力的だ。

 

その効果的に動き回る周囲の人の思いやりやエールに、分かっていてもホロリとしてしまい、心地よい感動を覚える。著者の自伝的な物語のようだが、主人公のように料理の才能にも恵まれていたのならば、物語を紡ぐギフトまで神様からもらった人らしい。ただ、この5年ほどは新作が出ていないようだし、ブログもTwitterも長いこと止まっていて、スランプなのだろうかと少々気にかかる。

 

 

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