あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

コロナ禍中のテレビ界の貴重な記録『不要不急の銀河』

録画してあったNHKの『不要不急の銀河』という番組を見た。コロナ禍で思うように撮影のできない中、リモートなどによる新しい試みの作品もいくつか見たが、やはり制約が大きすぎて、コロナ禍という「よく目」を取り払えば、作品としての質はいま一つのものが多かったように思う。

 

けれども、この番組はなかなか面白かった。もちろん、緊急事態宣言が解除になったあと、不自由がありながらもなんとかスタジオで撮影ができるようになってからのものなので、そのあたりはリモートドラマと比べることは公平ではない。

 

まだ緊急事態宣言下にあった時期の、リモートによるスタッフと医療関係者との会議に始まり、リモートでの俳優たちの台本の読み合わせ、宣言解除後のアクリル仕切り版を設置しマスク着用でのリハーサル風景や、それを医師たちに現場で見てもらいアドバイスを受ける様子など、あまり見ることのない番組作りの裏側の様子が興味深い。

 

物語は又吉直樹さんのオリジナル脚本で、舞台はコロナ禍で大きな痛手を受けた業界であるスナックだ。両親(小林勝也片桐はいり)から受け継いだ店「スナック銀河」を経営する夫婦(リリーフランキー夏帆)には思春期の息子(鈴木福)と、まだ幼い娘(りり花)がいる。

 

コロナ禍でも、店を潰さないためにも営業を続けたい夫。嫌がらせの張り紙をされ、休業しようと主張する妻。18歳の誕生日が近い息子は、なんとか17歳のうちに彼女とファーストキスをしたくて、ラップフィルム越しなら大丈夫だろうかなどあれこれ妄想を逞しくする・・・。

 

番組はドラマ&ドキュメントというくくりになっていて、ドキュメント部分には実際のスナック経営者へのインタビューや、首相や都知事の会見映像などもはさみ、良質な記録映像になっている。

 

面白く見るうちに、今回のコロナ騒動での行政の対応や人々の苦悩などに思いをいたさせる、非常に良質で興味深い作品になっていた。

 

 

へそ曲がりな私は大変な話題となった又吉さんの『火花』をいまだに読んでいないのだけれど、改めてなかなかの才能の持ち主だと思い、受賞作への興味も湧いてきた。

 

 

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