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無知・無関心の罪

録画しておいたETV特集ウクライナ侵攻が変える世界 私たちは何を目撃しているのか 海外の知性に聞く』(最初の放送は4月2日)を見た。

 

国家に翻弄された旧ソビエト諸国の人を書いてきたノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチさん、フランス歴代大統領の政策顧問を務めたジャック・アタリさん、新たな冷戦の始まりを警告するアメリカの政治学者イアン・ブレマーさんの3人に、知的で素敵な道傳愛子さんがインタビューしたものである。

 

アレクシエービッチさんもアタリさんももちろん期待にたがわず素晴らしかったのだけれど、今回私は、最後に登場したイアン・ブレマーさんの話に非常に感動した。以下、ブレマーさんの語られたことの抜粋を記す。

 

 

冷戦が終わった後、東欧諸国はEUNATOに加盟して西欧化を果たしたが、ロシアはのけ者にされ侮辱を感じた。冷戦は終わって(アタリさんは冷戦は終わっておらず、今最終局面を迎えているというとらえ方だった)も、ロシアはずっと漂流したままだった。

 

そして、その後もロシアのあらゆる横暴を目にしながら、西側諸国は傍観してきた。ウクライナ核兵器を放棄した時、ブダペスト覚書が結ばれたにもかかわらず、わずか20年後の2014年にロシアはウクライナに侵攻した。

 

けれどもアメリカもイギリスも、ウクライナNATO加盟国でないから兵を送るつもりはなく、経済制裁も大した規模では行わなかった。数十年にわたって西側諸国は、ロシアの裏庭の法の支配などどうでもいいという姿勢だった。その結果ロシアは、アメリカは関心がないのだとみて今回のウクライナの侵略という致命的な判断を下すことになった。

 

とは言っても、今回の侵攻の責任はすべてロシア大統領にある。プーチンは罪を免れられるものではない。が、西側諸国の数十年にわたる過ちの積み重ねも理解するべきで、それがプーチンを行動させたと知るべきだ。

 

第三次世界大戦はあってはならないし、その可能性は低いとは思うが、今「キューバ危機2.0」の世界にいることを意識し、時間をかけてこの問題を解決する必要がある。どんな政治的決断においても、今後は核の対立の可能性を考慮しなければならない。

 

世界大戦の可能性はあるのかと言われれば、あると言わなければならない。21世紀にこんなことを言わなくてはならないとは本当に弱ってしまう。核兵器が悪意を持って民間人に使われたのは、日本での2回だけだが、しかし二度と起きないようにするために、私たちはこの60年間何もしてこなかった。

 

ソ連が崩壊した頃より、核軍縮の会議は回数が減っている。そして「ウクライナも核があればロシアによる侵攻を防げたはず」「我々にも核兵器が必要だよね」と考える国が出てくるかもしれない。しかしそんな会話はしてはならない。恐ろしく危険なこと。

 

 

そして道傳さんが最後に、ブレマーさんの「あなたがウクライナのニュースを読み拡散しているなら、あなたはレジスタンスに参加している」という内容のツイートに触れ、あなたの伝えたかったメッセージは?と聞くと、

 

伝えたかったのは、普通の市民にも責任があるということ。自分のこととして関わり、世界で起きていることを理解するという責任。そして声をあげるべきです。あまりにも長い間、もう何十年も、市民の多くが受け身であり過ぎました。私には関係ない。ここでは起きない。私にはどうでもいいことだと。

 

その結果、国際的なのけ者、悪党、殺し屋が人類を破滅させる余地を増やしたのです。このような危機の時代、あなたに発信する場があるなら、声をあげる義務があります。地球をよくするためにです。

 

そしてビジネスの顧客たちは、現在の事態を友人や家族にどう話したらいいのか心配しています。世界は今、金儲けよりもっと深い不安の中にあるのです。自分たちが暮らすこの地球が持続可能なのか、どこへ向かっているのか。この4週間(インタビューは3月下旬か)の間に起きたことを見て、「問題ない。これからも大丈夫だ」と言える人はいません。

 

こう語るブレマーさんに深く心を打たれた。ひるがえって、今この国に、これくらい真摯に現状や今後について語ってくれる指導者がいるだろうかと悲しくなった。こんなにも真剣に、包み隠さず、事態の深刻さや取るべき対策を説いてくれれば、それが少々努力や痛みを伴うものであっても、私たちの心に届くのではないかと思う。

 

おりしも参院選が公示され、世間には敵を貶める言葉や選挙民への甘言などがあふれているが、ブレマーさんのような、真摯で胸を打つ言葉を聞きたいものだと切に思う。

 

 

道傳愛子キャスターとアレクシエービッチさん

 

イアン・ブレマーさん