あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

やっぱり素晴らしかったドラマ『30歳まで・・・』

テレビ東京で放送されている時に見て、途中から録画を消すのをやめて、部分的には2回目も見たドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いに慣れるらしい』を、またまたネットフリックスの配信で見てしまった。

 

うまく探せば見ていない作品で良いものがあるのだろうが、どうもネットフリックスが前面に推してくるものは胸がざわざわしそうな作品が多い。そのため、ほっこりと心温まるものが見たくて、ウ・ヨンウちゃんの2回目視聴をしたり、『30歳まで・・・』を見たりしてしまうのだ。

 

けれども、今回『30歳まで・・・』を再度見て大満足し、心がふんわり温かくなり、やっぱり素晴らしい作品だと再確認した。

 

文具会社で働く同期のサラリーマン、安達(赤楚衛二)と黒沢(町田啓太)の物語だ。安達は30歳の誕生日から、突然、触れた相手の心が読めるようになってしまい、格好良くて営業成績も常にトップで完璧人間の黒沢が、自分に熱い思いを抱いていることを知ってしまう。

 

男性から見るとどうなのか分からないけれど、黒沢が冴えない同期の安達に惹かれていく過程や、安達に対してさまざまに心を砕く黒沢の様子がこまやかに描かれているので、どちらの想いにも非常に共感でき、異性愛者である安達が徐々に黒沢の気持ちを受け入れ行くことに、違和感どころか共感さえ覚えてしまう。

 

いつも自分のことを見てくれていて、ちゃんと良さを見つけてくれて、こんなにも自分の喜ぶことばかりを願ってくれて陰に日向に守ってくれたら、もう男とか女とか関係なく好きになってしまうよね、一緒にいたいと思うよね、と思う(そのうえそれが「町田啓太さん!」なのだ)。

 

そんな彼らの関係を敏感に感じ取りながら、優しく温かく見守り必要に応じて応援する同僚の女性社員の藤崎さん(佐藤玲)も、間の悪い後輩六角(草川拓弥)も心優しい人たちだ。安達の大学時代の友人柘植(浅香航大)のキャラクターもとてもいい。

 

嫌な人が誰一人登場しないのに、ちゃんとハラハラ・ドキドキもあるし、笑ったりちょっとホロッと来たり・・・。『きのう何食べた?』と同じく、何も特別なことは起こらなくていいから、永遠にこの人たちの生活を見ていたい・・・と思わされるドラマだ。

 

 

同じくネットフリックスで『花束みたいな恋をした』も見たのだけれど、こちらは思い出しても胸が締め付けられる。現実には、こういうことの方が多いのだろうなと思う。特別上昇志向でもなく強く自分探しをするでもない、心優しいこうした二人が、ささやかに自分たちの好きなことを大切にして暮らしていける社会を求めるのは、無理なことなのだろうか。

 

『きのう・・・』の二人は弁護士と美容師だから、あまり食いはぐれの心配はないだろう。『30歳・・・』の二人は同じ会社なだけに、その会社が左前になれば心配だが、優秀な黒沢君なら、何があろうと新しい仕事を見つけていけそうだ。『花束・・・』の二人は圧迫面接を受けたり、少々ブラックかと思われる労働を強いられたりしている。

 

ベーシックインカムの社会になれば、『花束・・・』の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)も、ずっと二人らしく仲良く暮らして行けたのだろうか。