あとは野となれ山となれ

たいせつなことは目には見えないんだよ・・・

「自殺」という言葉を知らない国

ふれあい日本語教室の日。先週は大勢の参加者があって、お蔭で8か国語もの「こんにちは」という言葉をパネルに書くことができたのだけれど、今日の出席は半分ほどの6人だけだった。

 

私の受け持ちは、もう日本暮らしの長いペルーの女性2人。テキストも、他のグループは全て初級のⅠだが、このグループは一つ上のⅡで、それももう最後の敬語の2章で終わるところまで来ている。

 

2人とも仕事をしていない主婦であり日本語検定を受けるのでもないので、使えなくても(日本人でも、怪しい敬語を使うより「です・ます」の敬体で話せば十分)、言われたときに分かれば良いと思うので、今日は練習問題を消化するよりも、敬語を含んだ会話を中心に進めた。

 

そんな話の中で、Fさんが何かしきりに話してくれるのだけれど、なかなか私が理解できない。あちこちのグルーの声も聞こえるので、そもそも耳の悪い私には聞き取りにくい状況なのだが、いつもにも増して分からない。

 

何度も聞き返してやっと分かったことは、「日本では自分で自分を殺す人が多い」ということだった。ああ、「自殺」ですねと漢字を書いてそれぞれの字の説明をし、ペルーにはこの言葉はないんですか?と聞くと、もう1人のLさんも口をそろえて「ありません」と言われる。さらに、Lさんは「日本はストレスが多いですね」と言われる。

 

帰宅して調べてみると、スペイン語にも「suicidio」という単語はある。けれども、スペインとペルーの自殺率を見ると、世界での順位にして何十番も違う。サイトによってかなり順位に違いがあるが、それでもペルーは、どの統計でも170国くらいの中で低いほうから20番~30番ほどに入っている。

 

スペインでは使われたのであろう「suicidio」という語が、彼女たちの生活圏の中では使うことも耳にすることもなかったのだろう。それなのに、言葉の分からない日本に来て暮らすうち、「自殺」という言葉を知り、ストレスの多い日本社会でその自殺をする人が多いということを知ってしまった。

 

テキストの中の「夏休みは国にお帰りになりますか?」という文から、休暇の話になった時も、ペルーでは1か月の休みはごく普通に取れると言う。おそらく日本では仮に1か月の休みが取れるようになっても、「そんなに長い休み、何をしたらいいか分からない」とか「そんなにお金がない」とか言う人が出てくることだろう。どこにも行かなくても、お金を掛けなくても、家でゆっくりするだけでも人生の質が違ってくると思うのだが・・・。

 

日本は経済の面ではペルーより何十番も上位にいるが、当たり前に1か月の休みが取れたり、「自殺」という言葉を必要としないような国が私は羨ましい。選挙が近づいた時の街頭インタビューで、「景気を良くしてほしい」「経済を何とか・・・」と言う有権者が多い間は、そういう国の実現は難しいことだろうけれど。

 

 

「のんびり」が一番だよね。  (PETPET LIFEさんのサイトより)